Death Contract‐死神の契約‐
―カツン、カツン、カツン…。

何もない暗闇に、ハイヒールの音が響く。
その場には、男と女が一人。


「キオナ。よく来たな」


低音でハスキーな男の声がよく響いた。


「お呼びでしょうか」


キオナ、と呼ばれた女は男の3メートル程手前で膝をついた。


「ああ。君に人間界に行ってもらいたいんだが」

「…何故ですか」


女のこめかみに血管が浮き出た。


「お前が人間界を嫌っているのはよく知っている」

「では、何故っ…」

「調べてもらいたいものがある。もちろん、お前にしか出来ないことだ」

「調べてもらいたいものとは…?」

「耳をかせ」

「失礼します」


女は男に近寄り、男の口に耳を近づけた。


「―――…――………―。お前なら出来るだろう」

「…ええ」


女は笑いを浮かべながら言った。


「ガゼットに扉を開けてもらえ。私からも指示を出しておく」

「かしこまりました。では、失礼します」


その瞬間、女は消えた。
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