夏の終わりにピュアな恋を


その日は午後から天気が悪く、今にも雨が降りそうな空模様。
こんな日は残業などせず定時でさっさと帰りたい。

茜は仕事をできる限り調節し定時の十八時で仕事を終えた。

外に出ればポツリポツリと雨が降り出したところ。
最寄り駅までは徒歩五分という近い距離。

足を踏み出したはいいけれど、すぐに雨粒は大きくなった。

「やばっ」

最近ではゲリラ豪雨も頻繁に発生する。
それでも駅まで走れば何のことはない、もう、すぐそこなのだからと走り出した矢先。

ピカッと目の前が光ってドーンと雷が鳴った。

茜は体を強張らせ、すぐさま通りにある本屋に入っていく。

(なんで今雷が鳴るのよ)

ドキドキと早くなる鼓動を必死に抑えるが、外はあっという間に激しい雷雨になっていた。

スマホで雨雲レーダーを確認すれば、雨雲は三十分ほどで一旦は通り抜けていくらしい。

「はぁー」

茜は深いため息をつくと、店内をウロウロとし始めた。

傘は持っているから、雨だけなら別にゲリラ豪雨だろうが関係なく駅まで走ったものを、雷は無理だ。茜は雷が苦手なのだから。
鳴り止むまでしばらくここで時間を潰すしかない。

話題の小説を手に取りながら、最近ゆっくり読書などしていなかったなとぼんやり考えていると、「茜さん?」と声を掛けられその声色に心臓がドキリと跳ねた。

「……浩輝くん」

「わあ、こんなところで茜さんと会えるなんて」

「本当、奇遇……っ!」

浩輝の後ろのガラスが一面ピカッと光り、茜は思わず目を閉じた。

直後にドーンっと大きな地響きのような音が鳴り響く。

「びっくりしたー。……って茜さん、大丈夫?」

「……」

「……もしかして雷苦手な人?」

「……」

空は未だピカピカと怪しい光を放つ。
雨雲がちょうど真上を通過しているのかもしれない。

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