3人の子供のシングルマザーの徒然回想録
あの夜のこと
あの夜、私は大きくなってきたお腹を抱えて、眠りを貪っていました。
とにかく、眠い。
それまでも、思春期以降、とにかく眠かったのに、さらに眠い。
その上、明日の朝は夫(当時)の出勤が早い。
起きられないことは「悪」だったので、帰りが遅かった夫を待ち、食事を出し、片付けをし、やっと布団に入って明日の朝に備えていました。
なのに、その夜…
ドン、ボコン、ギュー、ギュー
…眠りについていた私のお腹。中にいる主が、騒ぎ出し、起こされたのです。
寝ぼけていながら、お腹をさすり
「ねぇ、ママは明日の朝早起きだから、一緒に寝ようね」
そんなことを話しかけました。
ところが、お腹の主は、いつも響いてくる音を聴いて、反応したのです。
なお、一層、激しく。
ボコンとか、ギューとか、ドンドンとか。
楽しそうに遊んでるようです。
「ねぇ…」
私は2、3回、さっきと同じようなことを話しかけましたが、主は、遊んでいると思っているのか、動きを止めません。
結局眠れず、私は飛び出してくるような手足を、お腹の上からしばらくツンツンして、相手をしました。
会ったこともないお腹の子供。でも、間違いなく私の体の中にいる。
同じ一つの体を共有しているのに、こちらの状況、気持ちは共有できていない。
…これが、子供なんだ。
まだ20を少し超えたくらいの若い私は、そう思いました。
同じ体を共有しても、別の人格なんだ…
この時、感じました。
どんなに子供でも、ちゃんと意思を持ってる。
やりたいこと、楽しいこと、きっと、私とは違うことを感じて生きるんだと。
ちゃんと、話をしないと、いくら自分の子供でも、わかんないな…。
眠りを遮られて、腹立たしかったのに。
急に、そんなことを思った、あの夜。
あの夜が、私の独特な子供との関わりのはじまりだったんじゃないかと、
今になって、そう思うのです。