ヒルダの約束
「小さい頃、お兄ちゃんのお嫁さんになるんだって言ったらお兄ちゃんは返事をしてくれなかった。それも忘れちゃった?」
「覚えているよ。それにちゃんと返事をした」
「嘘だ」
「ほんとだよ。じゃあ約束だねって言った。忘れたのはヒルダの方だよ」
ヒルダが笑う。オットーは真面目な顔に戻る。
「ねえヒルダ。二人で逃げよう。金の目当てはある。荷物を取っておいで。僕はガソリンを調達してくるから」
「うん。わかった」
病院へ戻って行くヒルダを見送り、オットーはガソリンを求めて歩き出した。街はずれまで来た時、向こうから二人の憲兵がやって来るのが見えた。素知らぬ顔でやり過ごすつもりが、おそらく様子がおかしかったのだろう、銃を構えて足早にこちらへやって来る。
どうする。逃げるか。しかしヒルダが。ここで始末してやるか。次の行動に迷っていると、空から爆音が聞こえてきた。すぐに空襲警報が鳴り始める。
「覚えているよ。それにちゃんと返事をした」
「嘘だ」
「ほんとだよ。じゃあ約束だねって言った。忘れたのはヒルダの方だよ」
ヒルダが笑う。オットーは真面目な顔に戻る。
「ねえヒルダ。二人で逃げよう。金の目当てはある。荷物を取っておいで。僕はガソリンを調達してくるから」
「うん。わかった」
病院へ戻って行くヒルダを見送り、オットーはガソリンを求めて歩き出した。街はずれまで来た時、向こうから二人の憲兵がやって来るのが見えた。素知らぬ顔でやり過ごすつもりが、おそらく様子がおかしかったのだろう、銃を構えて足早にこちらへやって来る。
どうする。逃げるか。しかしヒルダが。ここで始末してやるか。次の行動に迷っていると、空から爆音が聞こえてきた。すぐに空襲警報が鳴り始める。