コーヒー店のアールグレイ女史
私は藤堂 友莉子、36歳、バツイチ、弁護士。
司法試験に23歳で受かり、父が経営する藤堂弁護士事務所に入所。
父は私が一人でも生きていけるようにと幼い時からしっかり勉強をさせ、出来れば自分の後を継いでほしいと弁護士になることを希望した。私はその父の願いに逆らわなかった。そして無事に弁護士となり、この事務所で父に付いて様々な事を教わった。
私が29歳の時、父は突然病で亡くなった。
母は私が小さい時に亡くなっていたので、いきなりひとりぼっちになってしまった。でも、手を貸してくれる人はいた。
弁護士事務所には父の長年の相棒であり相談役であった長老の井上が働いてくれていたので、事務所は安泰だった。
そして、そのころ知り合った別れた旦那も私に手を貸してくれた一人だった。
彼も弁護士で、当時別の事務所に勤めていた。彼は優しく、付き合い始めて直ぐに結婚を申し込まれ、結婚後は藤堂弁護士事務所で一緒に働くと約束してくれた。その頃はとにかく心細かったし、30歳になるというあせりもあったので直ぐに彼と結婚をした。その時は心底嬉しかった。
しかし、結婚すると彼は豹変した。言葉による暴力、夜は帰ってこない。調べると長年付き合っていた女がいた。
弁護士のくせに・・・
仮面を被っていた彼はただこの小さいけれども有名企業の顧問弁護士を数社している名の通った藤堂弁護士事務所が欲しかっただけだった。
とんでもない男だった。
私はすぐに井上に頼んで協議離婚をした。
離婚成立までの日々は精神的に削れた。耐えられない気がした。
井上さんと井上さんの奥様が私を支えてくれた・・・
ありがたかった・・・