お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
二年半のアルフレッドとの婚約は、アイリーンに、ある種の絶望と失望をもたらした。
あんなに大切にして貰ったのに、アルフレッドの想いに答えることができなかった自分に対する失望と、まだ子供だったアイリーンが、大人のアルフレッドの想いに答える気がないと分かると、アルフレッドは直ぐにローズマリーに想いを寄せるようになり、ローズマリーもアイリーンの婚約者であると知りながら、アルフレッドに想いを寄せ、誰よりもアイリーンに近しく親しい二人が、アイリーンに気付かれてないと信じて、隠れて逢い引きしていたことにアイリーンは絶望した。
誰よりも親しい二人だから、本当のことを話して欲しかった。そうすれば、自分は心から祝福し、兄のウィリアムが帰国したら、直ぐに二人が結婚できるように、婚約の解消だろうと何だろうと、二人の力になれることなら、努力を惜しむつもりはなかった。
でも二人は、アイリーンに恋人同士であることを隠し続けた。
「レディ、嫌なことをきいて申し訳ない。どうか、忘れてください」
答えないアイリーンに、カルヴァドスが謝罪した。
「どこから話して良いか分からなくて。とても強引で、残忍で・・・・・・」
アイリーンは言葉を探すように言った。
「残忍?」
カルヴァドスは聞き間違いかと問い返した。
「はい。もし、私が結婚を承諾せず、他に好きな人が居るなら、その人を殺すと・・・・・・」
アイリーンの言葉にカルヴァドスが目を見開いた。
「そして、無理矢理、結婚に合意させて、口付けを・・・・・・」
カルヴァドスがギュッと拳を握り、腕を振るわせた。
「初めてだったんです」
アイリーンの瞳から涙がこぼれた。
「その、タリアレーナにいる彼とは?」
信じられないというように、カルヴァドスが問いかけた。
「していません。私は、心のつながりを大切にしたかったんです。でも、殿方からしたら、口付けも許さないような女性とは、真剣に将来を考えられないのでしょうね」
アイリーンは寂しそうに言った。
確かに、男の身からすれば、触れあうことも、口付けする事も出来ず、ただ心のつながりだけと言われて、何年も我慢できるかと言われれば苦しい。しかしカルヴァドスは、ずっと遠くから見つめるだけの恋をしていたから、アイリーンの心のつながりを大切にしたいという言葉が、自分とアイリーンを結びつけているように感じた。
「俺は、レディが永遠の愛を俺にくれるというなら、何年でも待てる。口付け出来なくても、触れあうことが出来なくても、俺は構わない」
カルヴァドスの言葉は優しくアイリーンを包んだ。
「俺は、レディに無理矢理口づけた、その男を捕まえて舌を切り落としてやりたい。二度と、脅しの言葉をレディの耳元で囁けないように」
(・・・・・・・・例え、カルヴァドスさんが下級貴族の子息でも、平民でも構わない。もっと早く出逢いたかった。この世界には、カルヴァドスさんみたいな殿方も居るのだと、もっと早く知りたかった。そうしたら、私は、きっと・・・・・・・・)
アイリーンの瞳から涙がこぼれた。
「レディ、申し訳ない。暴力的な言葉に、不愉快な気持ちがされたでしょう」
カルヴァドスは、何も悪くないのに謝罪した。
「もっと、早くカルヴァドスさんに出逢いたかったです」
アイリーンは、堪えきれずに想いを吐露した。
「えっ? レディ、今なんて?」
カルヴァドスは自分の耳を疑った。
「きっと、もっと早くカルヴァドスさんに出逢っていたら、私は・・・・・・」
「レディ?」
「私・・・・・・」
続きの言葉を飲み込んだアイリーンの隣にカルヴァドスは移動すると、無言でアイリーンの肩を抱いた。
「余りに色々なことがありすぎて、レディの心は疲れてしまっているんだ。時間は、まだ、たっぷりある。思い詰めないで、ゆっくり心を休めてあげるといい」
カルヴァドスの優しさに、再び涙が溢れ、アイリーンは両手で顔を覆った。そっとカルヴァドスが腕に力を込めると、アイリーンはカルヴァドスの胸に顔を埋め、泣き崩れた。
そこにいるのは、姫巫女でも、国を背負って立っていた王女でもない、何の後ろ盾もない、アイリーンという名の十八歳の娘だった。
「気が済むまで泣くといい。貨物船に働きながら乗らせて欲しいなんて、見も知らぬ男と同室で過ごしてもいいなんて考えるほど追い詰められていたんだ。もう、何も考えなくていい。苦しいことは、全部俺に打ち明ければいい。話すだけでも心は軽くなるから・・・・・・」
二年半のアルフレッドとの婚約は、アイリーンに、ある種の絶望と失望をもたらした。
あんなに大切にして貰ったのに、アルフレッドの想いに答えることができなかった自分に対する失望と、まだ子供だったアイリーンが、大人のアルフレッドの想いに答える気がないと分かると、アルフレッドは直ぐにローズマリーに想いを寄せるようになり、ローズマリーもアイリーンの婚約者であると知りながら、アルフレッドに想いを寄せ、誰よりもアイリーンに近しく親しい二人が、アイリーンに気付かれてないと信じて、隠れて逢い引きしていたことにアイリーンは絶望した。
誰よりも親しい二人だから、本当のことを話して欲しかった。そうすれば、自分は心から祝福し、兄のウィリアムが帰国したら、直ぐに二人が結婚できるように、婚約の解消だろうと何だろうと、二人の力になれることなら、努力を惜しむつもりはなかった。
でも二人は、アイリーンに恋人同士であることを隠し続けた。
「レディ、嫌なことをきいて申し訳ない。どうか、忘れてください」
答えないアイリーンに、カルヴァドスが謝罪した。
「どこから話して良いか分からなくて。とても強引で、残忍で・・・・・・」
アイリーンは言葉を探すように言った。
「残忍?」
カルヴァドスは聞き間違いかと問い返した。
「はい。もし、私が結婚を承諾せず、他に好きな人が居るなら、その人を殺すと・・・・・・」
アイリーンの言葉にカルヴァドスが目を見開いた。
「そして、無理矢理、結婚に合意させて、口付けを・・・・・・」
カルヴァドスがギュッと拳を握り、腕を振るわせた。
「初めてだったんです」
アイリーンの瞳から涙がこぼれた。
「その、タリアレーナにいる彼とは?」
信じられないというように、カルヴァドスが問いかけた。
「していません。私は、心のつながりを大切にしたかったんです。でも、殿方からしたら、口付けも許さないような女性とは、真剣に将来を考えられないのでしょうね」
アイリーンは寂しそうに言った。
確かに、男の身からすれば、触れあうことも、口付けする事も出来ず、ただ心のつながりだけと言われて、何年も我慢できるかと言われれば苦しい。しかしカルヴァドスは、ずっと遠くから見つめるだけの恋をしていたから、アイリーンの心のつながりを大切にしたいという言葉が、自分とアイリーンを結びつけているように感じた。
「俺は、レディが永遠の愛を俺にくれるというなら、何年でも待てる。口付け出来なくても、触れあうことが出来なくても、俺は構わない」
カルヴァドスの言葉は優しくアイリーンを包んだ。
「俺は、レディに無理矢理口づけた、その男を捕まえて舌を切り落としてやりたい。二度と、脅しの言葉をレディの耳元で囁けないように」
(・・・・・・・・例え、カルヴァドスさんが下級貴族の子息でも、平民でも構わない。もっと早く出逢いたかった。この世界には、カルヴァドスさんみたいな殿方も居るのだと、もっと早く知りたかった。そうしたら、私は、きっと・・・・・・・・)
アイリーンの瞳から涙がこぼれた。
「レディ、申し訳ない。暴力的な言葉に、不愉快な気持ちがされたでしょう」
カルヴァドスは、何も悪くないのに謝罪した。
「もっと、早くカルヴァドスさんに出逢いたかったです」
アイリーンは、堪えきれずに想いを吐露した。
「えっ? レディ、今なんて?」
カルヴァドスは自分の耳を疑った。
「きっと、もっと早くカルヴァドスさんに出逢っていたら、私は・・・・・・」
「レディ?」
「私・・・・・・」
続きの言葉を飲み込んだアイリーンの隣にカルヴァドスは移動すると、無言でアイリーンの肩を抱いた。
「余りに色々なことがありすぎて、レディの心は疲れてしまっているんだ。時間は、まだ、たっぷりある。思い詰めないで、ゆっくり心を休めてあげるといい」
カルヴァドスの優しさに、再び涙が溢れ、アイリーンは両手で顔を覆った。そっとカルヴァドスが腕に力を込めると、アイリーンはカルヴァドスの胸に顔を埋め、泣き崩れた。
そこにいるのは、姫巫女でも、国を背負って立っていた王女でもない、何の後ろ盾もない、アイリーンという名の十八歳の娘だった。
「気が済むまで泣くといい。貨物船に働きながら乗らせて欲しいなんて、見も知らぬ男と同室で過ごしてもいいなんて考えるほど追い詰められていたんだ。もう、何も考えなくていい。苦しいことは、全部俺に打ち明ければいい。話すだけでも心は軽くなるから・・・・・・」
二年半のアルフレッドとの婚約は、アイリーンに、ある種の絶望と失望をもたらした。
あんなに大切にして貰ったのに、アルフレッドの想いに答えることができなかった自分に対する失望と、まだ子供だったアイリーンが、大人のアルフレッドの想いに答える気がないと分かると、アルフレッドは直ぐにローズマリーに想いを寄せるようになり、ローズマリーもアイリーンの婚約者であると知りながら、アルフレッドに想いを寄せ、誰よりもアイリーンに近しく親しい二人が、アイリーンに気付かれてないと信じて、隠れて逢い引きしていたことにアイリーンは絶望した。
誰よりも親しい二人だから、本当のことを話して欲しかった。そうすれば、自分は心から祝福し、兄のウィリアムが帰国したら、直ぐに二人が結婚できるように、婚約の解消だろうと何だろうと、二人の力になれることなら、努力を惜しむつもりはなかった。
でも二人は、アイリーンに恋人同士であることを隠し続けた。
「レディ、嫌なことをきいて申し訳ない。どうか、忘れてください」
答えないアイリーンに、カルヴァドスが謝罪した。
「どこから話して良いか分からなくて。とても強引で、残忍で・・・・・・」
アイリーンは言葉を探すように言った。
「残忍?」
カルヴァドスは聞き間違いかと問い返した。
「はい。もし、私が結婚を承諾せず、他に好きな人が居るなら、その人を殺すと・・・・・・」
アイリーンの言葉にカルヴァドスが目を見開いた。
「そして、無理矢理、結婚に合意させて、口付けを・・・・・・」
カルヴァドスがギュッと拳を握り、腕を振るわせた。
「初めてだったんです」
アイリーンの瞳から涙がこぼれた。
「その、タリアレーナにいる彼とは?」
信じられないというように、カルヴァドスが問いかけた。
「していません。私は、心のつながりを大切にしたかったんです。でも、殿方からしたら、口付けも許さないような女性とは、真剣に将来を考えられないのでしょうね」
アイリーンは寂しそうに言った。
確かに、男の身からすれば、触れあうことも、口付けする事も出来ず、ただ心のつながりだけと言われて、何年も我慢できるかと言われれば苦しい。しかしカルヴァドスは、ずっと遠くから見つめるだけの恋をしていたから、アイリーンの心のつながりを大切にしたいという言葉が、自分とアイリーンを結びつけているように感じた。
「俺は、レディが永遠の愛を俺にくれるというなら、何年でも待てる。口付け出来なくても、触れあうことが出来なくても、俺は構わない」
カルヴァドスの言葉は優しくアイリーンを包んだ。
「俺は、レディに無理矢理口づけた、その男を捕まえて舌を切り落としてやりたい。二度と、脅しの言葉をレディの耳元で囁けないように」
(・・・・・・・・例え、カルヴァドスさんが下級貴族の子息でも、平民でも構わない。もっと早く出逢いたかった。この世界には、カルヴァドスさんみたいな殿方も居るのだと、もっと早く知りたかった。そうしたら、私は、きっと・・・・・・・・)
アイリーンの瞳から涙がこぼれた。
「レディ、申し訳ない。暴力的な言葉に、不愉快な気持ちがされたでしょう」
カルヴァドスは、何も悪くないのに謝罪した。
「もっと、早くカルヴァドスさんに出逢いたかったです」
アイリーンは、堪えきれずに想いを吐露した。
「えっ? レディ、今なんて?」
カルヴァドスは自分の耳を疑った。
「きっと、もっと早くカルヴァドスさんに出逢っていたら、私は・・・・・・」
「レディ?」
「私・・・・・・」
続きの言葉を飲み込んだアイリーンの隣にカルヴァドスは移動すると、無言でアイリーンの肩を抱いた。
「余りに色々なことがありすぎて、レディの心は疲れてしまっているんだ。時間は、まだ、たっぷりある。思い詰めないで、ゆっくり心を休めてあげるといい」
カルヴァドスの優しさに、再び涙が溢れ、アイリーンは両手で顔を覆った。そっとカルヴァドスが腕に力を込めると、アイリーンはカルヴァドスの胸に顔を埋め、泣き崩れた。
そこにいるのは、姫巫女でも、国を背負って立っていた王女でもない、何の後ろ盾もない、アイリーンという名の十八歳の娘だった。
「気が済むまで泣くといい。貨物船に働きながら乗らせて欲しいなんて、見も知らぬ男と同室で過ごしてもいいなんて考えるほど追い詰められていたんだ。もう、何も考えなくていい。苦しいことは、全部俺に打ち明ければいい。話すだけでも心は軽くなるから・・・・・・」
カルヴァドスは優しくアイリーンを抱きしめ、優しく耳元で囁いた。
あんなに大切にして貰ったのに、アルフレッドの想いに答えることができなかった自分に対する失望と、まだ子供だったアイリーンが、大人のアルフレッドの想いに答える気がないと分かると、アルフレッドは直ぐにローズマリーに想いを寄せるようになり、ローズマリーもアイリーンの婚約者であると知りながら、アルフレッドに想いを寄せ、誰よりもアイリーンに近しく親しい二人が、アイリーンに気付かれてないと信じて、隠れて逢い引きしていたことにアイリーンは絶望した。
誰よりも親しい二人だから、本当のことを話して欲しかった。そうすれば、自分は心から祝福し、兄のウィリアムが帰国したら、直ぐに二人が結婚できるように、婚約の解消だろうと何だろうと、二人の力になれることなら、努力を惜しむつもりはなかった。
でも二人は、アイリーンに恋人同士であることを隠し続けた。
「レディ、嫌なことをきいて申し訳ない。どうか、忘れてください」
答えないアイリーンに、カルヴァドスが謝罪した。
「どこから話して良いか分からなくて。とても強引で、残忍で・・・・・・」
アイリーンは言葉を探すように言った。
「残忍?」
カルヴァドスは聞き間違いかと問い返した。
「はい。もし、私が結婚を承諾せず、他に好きな人が居るなら、その人を殺すと・・・・・・」
アイリーンの言葉にカルヴァドスが目を見開いた。
「そして、無理矢理、結婚に合意させて、口付けを・・・・・・」
カルヴァドスがギュッと拳を握り、腕を振るわせた。
「初めてだったんです」
アイリーンの瞳から涙がこぼれた。
「その、タリアレーナにいる彼とは?」
信じられないというように、カルヴァドスが問いかけた。
「していません。私は、心のつながりを大切にしたかったんです。でも、殿方からしたら、口付けも許さないような女性とは、真剣に将来を考えられないのでしょうね」
アイリーンは寂しそうに言った。
確かに、男の身からすれば、触れあうことも、口付けする事も出来ず、ただ心のつながりだけと言われて、何年も我慢できるかと言われれば苦しい。しかしカルヴァドスは、ずっと遠くから見つめるだけの恋をしていたから、アイリーンの心のつながりを大切にしたいという言葉が、自分とアイリーンを結びつけているように感じた。
「俺は、レディが永遠の愛を俺にくれるというなら、何年でも待てる。口付け出来なくても、触れあうことが出来なくても、俺は構わない」
カルヴァドスの言葉は優しくアイリーンを包んだ。
「俺は、レディに無理矢理口づけた、その男を捕まえて舌を切り落としてやりたい。二度と、脅しの言葉をレディの耳元で囁けないように」
(・・・・・・・・例え、カルヴァドスさんが下級貴族の子息でも、平民でも構わない。もっと早く出逢いたかった。この世界には、カルヴァドスさんみたいな殿方も居るのだと、もっと早く知りたかった。そうしたら、私は、きっと・・・・・・・・)
アイリーンの瞳から涙がこぼれた。
「レディ、申し訳ない。暴力的な言葉に、不愉快な気持ちがされたでしょう」
カルヴァドスは、何も悪くないのに謝罪した。
「もっと、早くカルヴァドスさんに出逢いたかったです」
アイリーンは、堪えきれずに想いを吐露した。
「えっ? レディ、今なんて?」
カルヴァドスは自分の耳を疑った。
「きっと、もっと早くカルヴァドスさんに出逢っていたら、私は・・・・・・」
「レディ?」
「私・・・・・・」
続きの言葉を飲み込んだアイリーンの隣にカルヴァドスは移動すると、無言でアイリーンの肩を抱いた。
「余りに色々なことがありすぎて、レディの心は疲れてしまっているんだ。時間は、まだ、たっぷりある。思い詰めないで、ゆっくり心を休めてあげるといい」
カルヴァドスの優しさに、再び涙が溢れ、アイリーンは両手で顔を覆った。そっとカルヴァドスが腕に力を込めると、アイリーンはカルヴァドスの胸に顔を埋め、泣き崩れた。
そこにいるのは、姫巫女でも、国を背負って立っていた王女でもない、何の後ろ盾もない、アイリーンという名の十八歳の娘だった。
「気が済むまで泣くといい。貨物船に働きながら乗らせて欲しいなんて、見も知らぬ男と同室で過ごしてもいいなんて考えるほど追い詰められていたんだ。もう、何も考えなくていい。苦しいことは、全部俺に打ち明ければいい。話すだけでも心は軽くなるから・・・・・・」
二年半のアルフレッドとの婚約は、アイリーンに、ある種の絶望と失望をもたらした。
あんなに大切にして貰ったのに、アルフレッドの想いに答えることができなかった自分に対する失望と、まだ子供だったアイリーンが、大人のアルフレッドの想いに答える気がないと分かると、アルフレッドは直ぐにローズマリーに想いを寄せるようになり、ローズマリーもアイリーンの婚約者であると知りながら、アルフレッドに想いを寄せ、誰よりもアイリーンに近しく親しい二人が、アイリーンに気付かれてないと信じて、隠れて逢い引きしていたことにアイリーンは絶望した。
誰よりも親しい二人だから、本当のことを話して欲しかった。そうすれば、自分は心から祝福し、兄のウィリアムが帰国したら、直ぐに二人が結婚できるように、婚約の解消だろうと何だろうと、二人の力になれることなら、努力を惜しむつもりはなかった。
でも二人は、アイリーンに恋人同士であることを隠し続けた。
「レディ、嫌なことをきいて申し訳ない。どうか、忘れてください」
答えないアイリーンに、カルヴァドスが謝罪した。
「どこから話して良いか分からなくて。とても強引で、残忍で・・・・・・」
アイリーンは言葉を探すように言った。
「残忍?」
カルヴァドスは聞き間違いかと問い返した。
「はい。もし、私が結婚を承諾せず、他に好きな人が居るなら、その人を殺すと・・・・・・」
アイリーンの言葉にカルヴァドスが目を見開いた。
「そして、無理矢理、結婚に合意させて、口付けを・・・・・・」
カルヴァドスがギュッと拳を握り、腕を振るわせた。
「初めてだったんです」
アイリーンの瞳から涙がこぼれた。
「その、タリアレーナにいる彼とは?」
信じられないというように、カルヴァドスが問いかけた。
「していません。私は、心のつながりを大切にしたかったんです。でも、殿方からしたら、口付けも許さないような女性とは、真剣に将来を考えられないのでしょうね」
アイリーンは寂しそうに言った。
確かに、男の身からすれば、触れあうことも、口付けする事も出来ず、ただ心のつながりだけと言われて、何年も我慢できるかと言われれば苦しい。しかしカルヴァドスは、ずっと遠くから見つめるだけの恋をしていたから、アイリーンの心のつながりを大切にしたいという言葉が、自分とアイリーンを結びつけているように感じた。
「俺は、レディが永遠の愛を俺にくれるというなら、何年でも待てる。口付け出来なくても、触れあうことが出来なくても、俺は構わない」
カルヴァドスの言葉は優しくアイリーンを包んだ。
「俺は、レディに無理矢理口づけた、その男を捕まえて舌を切り落としてやりたい。二度と、脅しの言葉をレディの耳元で囁けないように」
(・・・・・・・・例え、カルヴァドスさんが下級貴族の子息でも、平民でも構わない。もっと早く出逢いたかった。この世界には、カルヴァドスさんみたいな殿方も居るのだと、もっと早く知りたかった。そうしたら、私は、きっと・・・・・・・・)
アイリーンの瞳から涙がこぼれた。
「レディ、申し訳ない。暴力的な言葉に、不愉快な気持ちがされたでしょう」
カルヴァドスは、何も悪くないのに謝罪した。
「もっと、早くカルヴァドスさんに出逢いたかったです」
アイリーンは、堪えきれずに想いを吐露した。
「えっ? レディ、今なんて?」
カルヴァドスは自分の耳を疑った。
「きっと、もっと早くカルヴァドスさんに出逢っていたら、私は・・・・・・」
「レディ?」
「私・・・・・・」
続きの言葉を飲み込んだアイリーンの隣にカルヴァドスは移動すると、無言でアイリーンの肩を抱いた。
「余りに色々なことがありすぎて、レディの心は疲れてしまっているんだ。時間は、まだ、たっぷりある。思い詰めないで、ゆっくり心を休めてあげるといい」
カルヴァドスの優しさに、再び涙が溢れ、アイリーンは両手で顔を覆った。そっとカルヴァドスが腕に力を込めると、アイリーンはカルヴァドスの胸に顔を埋め、泣き崩れた。
そこにいるのは、姫巫女でも、国を背負って立っていた王女でもない、何の後ろ盾もない、アイリーンという名の十八歳の娘だった。
「気が済むまで泣くといい。貨物船に働きながら乗らせて欲しいなんて、見も知らぬ男と同室で過ごしてもいいなんて考えるほど追い詰められていたんだ。もう、何も考えなくていい。苦しいことは、全部俺に打ち明ければいい。話すだけでも心は軽くなるから・・・・・・」
二年半のアルフレッドとの婚約は、アイリーンに、ある種の絶望と失望をもたらした。
あんなに大切にして貰ったのに、アルフレッドの想いに答えることができなかった自分に対する失望と、まだ子供だったアイリーンが、大人のアルフレッドの想いに答える気がないと分かると、アルフレッドは直ぐにローズマリーに想いを寄せるようになり、ローズマリーもアイリーンの婚約者であると知りながら、アルフレッドに想いを寄せ、誰よりもアイリーンに近しく親しい二人が、アイリーンに気付かれてないと信じて、隠れて逢い引きしていたことにアイリーンは絶望した。
誰よりも親しい二人だから、本当のことを話して欲しかった。そうすれば、自分は心から祝福し、兄のウィリアムが帰国したら、直ぐに二人が結婚できるように、婚約の解消だろうと何だろうと、二人の力になれることなら、努力を惜しむつもりはなかった。
でも二人は、アイリーンに恋人同士であることを隠し続けた。
「レディ、嫌なことをきいて申し訳ない。どうか、忘れてください」
答えないアイリーンに、カルヴァドスが謝罪した。
「どこから話して良いか分からなくて。とても強引で、残忍で・・・・・・」
アイリーンは言葉を探すように言った。
「残忍?」
カルヴァドスは聞き間違いかと問い返した。
「はい。もし、私が結婚を承諾せず、他に好きな人が居るなら、その人を殺すと・・・・・・」
アイリーンの言葉にカルヴァドスが目を見開いた。
「そして、無理矢理、結婚に合意させて、口付けを・・・・・・」
カルヴァドスがギュッと拳を握り、腕を振るわせた。
「初めてだったんです」
アイリーンの瞳から涙がこぼれた。
「その、タリアレーナにいる彼とは?」
信じられないというように、カルヴァドスが問いかけた。
「していません。私は、心のつながりを大切にしたかったんです。でも、殿方からしたら、口付けも許さないような女性とは、真剣に将来を考えられないのでしょうね」
アイリーンは寂しそうに言った。
確かに、男の身からすれば、触れあうことも、口付けする事も出来ず、ただ心のつながりだけと言われて、何年も我慢できるかと言われれば苦しい。しかしカルヴァドスは、ずっと遠くから見つめるだけの恋をしていたから、アイリーンの心のつながりを大切にしたいという言葉が、自分とアイリーンを結びつけているように感じた。
「俺は、レディが永遠の愛を俺にくれるというなら、何年でも待てる。口付け出来なくても、触れあうことが出来なくても、俺は構わない」
カルヴァドスの言葉は優しくアイリーンを包んだ。
「俺は、レディに無理矢理口づけた、その男を捕まえて舌を切り落としてやりたい。二度と、脅しの言葉をレディの耳元で囁けないように」
(・・・・・・・・例え、カルヴァドスさんが下級貴族の子息でも、平民でも構わない。もっと早く出逢いたかった。この世界には、カルヴァドスさんみたいな殿方も居るのだと、もっと早く知りたかった。そうしたら、私は、きっと・・・・・・・・)
アイリーンの瞳から涙がこぼれた。
「レディ、申し訳ない。暴力的な言葉に、不愉快な気持ちがされたでしょう」
カルヴァドスは、何も悪くないのに謝罪した。
「もっと、早くカルヴァドスさんに出逢いたかったです」
アイリーンは、堪えきれずに想いを吐露した。
「えっ? レディ、今なんて?」
カルヴァドスは自分の耳を疑った。
「きっと、もっと早くカルヴァドスさんに出逢っていたら、私は・・・・・・」
「レディ?」
「私・・・・・・」
続きの言葉を飲み込んだアイリーンの隣にカルヴァドスは移動すると、無言でアイリーンの肩を抱いた。
「余りに色々なことがありすぎて、レディの心は疲れてしまっているんだ。時間は、まだ、たっぷりある。思い詰めないで、ゆっくり心を休めてあげるといい」
カルヴァドスの優しさに、再び涙が溢れ、アイリーンは両手で顔を覆った。そっとカルヴァドスが腕に力を込めると、アイリーンはカルヴァドスの胸に顔を埋め、泣き崩れた。
そこにいるのは、姫巫女でも、国を背負って立っていた王女でもない、何の後ろ盾もない、アイリーンという名の十八歳の娘だった。
「気が済むまで泣くといい。貨物船に働きながら乗らせて欲しいなんて、見も知らぬ男と同室で過ごしてもいいなんて考えるほど追い詰められていたんだ。もう、何も考えなくていい。苦しいことは、全部俺に打ち明ければいい。話すだけでも心は軽くなるから・・・・・・」
カルヴァドスは優しくアイリーンを抱きしめ、優しく耳元で囁いた。