お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
「実は、屋敷の古い資料を漁ってて発見したんだ」
 話の展開が見えず、背を向けていたローズマリーは、アルフレッドの方を向き直った。
「レザリヤフォード侯爵家から、かなり前だがエクソシアの皇帝に嫁いだ娘が居る」
「レザリヤフォード侯爵家というと、まだタリアレーナにいらした頃の?」
「ああ、エクソシアは一夫多妻だから、数のうちだが、幸運にも、嫁いだのは直系の娘の一人で、俺とどういう間柄になるかは分からないが、現在の皇帝は、レザリヤフォード侯爵家から嫁いだ夫人の子供の子孫になるらしい。だから俺は、かなり強引に言えば、エクソシア皇帝と遠戚続きと言うことになる。だから、それを使って、エクソシア皇帝に親書を送ろうと思ってる。さすがに、レザリヤフォード侯爵の名前を出せば、読まずに捨てられることはないと思う」
「アルフ・・・・・・」
「エクソシアは、パレマキリアを併合するチャンスをこの百年狙ってる。六ヶ国同盟の同盟国として、パレマキリアがデロスに攻撃を仕掛けているだけじゃなく、アイリーンを脅してダリウス王子に嫁がせようとしていること、諸々を耳に入れれば、六ヶ国同盟からのデロス不可侵の申し入れをパレマキリアが無視していることも報告できる。エクソシアが動けば、パレマキリアはデロスに置いておく兵も惜しくなるだろうから。ダメ元で賭けてみるつもりだ」
「アルフ!」
 真剣に、アイリーンを助けるために寝る間も惜しんで頑張ってくれているアルフレッドに、ローズマリーは耐えられなくなってアルフレッドの胸に飛び込んだ。
「マリー、俺はそろそろ行く。お休み」
 アルフレッドはローズマリーの額にキスを落とした。
 アイリーンが戻るまで、恋人同士の口付けも逢い引きもしないというのが、二人のアイリーンが無事にウィリアム王太子をつれて帰ってくることに対する願掛けだった。
「おやすみなさい」
 ローズマリーに見送られ、アルフレッドは窓から外へと出て行った。
 ローズマリーは微かな蝋燭の灯りを頼りに窓に鍵をかけると、アイゼンハイム、ラフカディオの二匹におやすみの挨拶をして部屋を後にした。
 当然、主不在なので、ローズマリーは廊下から扉に鍵をかけて侵入者を阻むようにしていた。
 こうすると、アイゼンハイムとラフカディオが部屋に閉じこめられた様に見えるが、窓の鍵には細工がしてあり、二匹は必要な時に中から開けて外に出ることが出来、部屋に戻って扉を閉めると自動で鍵がかかる仕組みになっているので、夜中のスパイ狩りに支障はなかった。

☆☆☆

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