お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
「散歩をしないか?」
 カルヴァドスに誘われ、アイリーンとカルヴァドスは公園へとむかった。
 南国のデロスとは違うエクソシアの公園の木々は、どれもアイリーンの目を楽しませた。
 中でも薔薇園で咲き誇る薔薇達の姿に、アイリーンはその場から動けなくなるほど心を引きつけられた。
「デロスでは蘭の花が多いけれど、エクソシアではバラが国の花とされているので、大きな公園には必ず薔薇園がある。アイリが愛用している薔薇水は多分、エクソシア製だと思うよ」
 カルヴァドスは楽しそうに言うと、アイリの薔薇の香りと、薔薇園の花の香りを比べた。
「うーん、でも、この甘い香りは薔薇じゃなくアイリの薫りだと思うな」
 カルヴァドスは優しくアイリーンを抱きしめると、木陰のベンチに導き唇を重ねた。
 昨夜のギクシャクした空気が嘘のように、アイリーンは笑顔で幸せそうにカルヴァドスの口付けを受け入れた。
「ああ、アイリ、愛してる」
 狂おしい程に、カルヴァドスはアイリーンが欲しくてたまらなくなった。
「許されるなら、アイリ、君を僕のものにしてしまいたい」
 アイリーンの瞳が揺れた。
「わかってる。許されないことだ。君には婚約者が居るのだから」
 カルヴァドスは自分に言い聞かせるように言った。

(・・・・・・・・今日一日だけだから、カルヴァドスさんの恋人として、いっそ全てをカルヴァドスさんに捧げられたら・・・・・・。身代わりでも、代用品でも良い。私が愛しているのはカルヴァドスさんなのだから・・・・・・・・)

「そろそろ日が暮れてきた。ホテルに戻ろうか。ディナーの為のドレスが届いているかもしれない」
 カルヴァドスに言われ、公園で抱き合い、互いの温もりを感じていた二人は、公園を出て、大通りから馬車でホテルへと戻った。

☆☆☆

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