お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
「ああ、気持ちよかった」
 パジャマ姿のカルヴァドスが、同じ様にタオルで髪の毛を拭きながら姿を見せた。
「アイリ、水飲むか? それとも、アイスクリーム食べるか?」
 カルヴァドスは言いながら、部屋の隅のリボンを引く。
 暫くすると、ノックの音がして、コンシェルジュがやってきた。
「冷たい水をボトルで二本、それからアイスクリームを一つ」
 コンシェルジュは直ぐに下がっていった。
 十分ほどして戻ってきたコンシェルジュに、カルヴァドスはたっぷりチップを渡してトレイを受け取った。
「ほら、アイスクリーム!」
 アイリーンの前にアイスクリームを置くと、カルヴァドスはボトルで冷たい水を飲んだ。
 今日二個目のアイスクリームだが、アイリーンは目を輝かせて口に運んだ。
「ほんと、アイリのストロベリーブロンドは綺麗だな」
 カルヴァドスが手を伸ばしてまだ湿ったままのアイリーンの髪を一房手に取った。
「カルヴァドスさんのオレンジ色の髪も素敵です」
 アイリーンはアイスクリームをスプーンですくいながら言った。
「俺のは染めてるんだから、地毛じゃない。でも、アイリのは、赤が強過ぎもしないし、ゴールドが強過ぎもしない。綺麗なストロベリーブロンドだ」
「そんなことないですよ。カルヴァドスさんが大好きな姫様の方が、もっと素敵ですよ。よくお手入れされた髪は、こんなパサパサじゃないですし、しっとりとして、サラサラです」
 今の自分と王宮に居た頃の自分を比べてアイリーンは言った。
「でも、俺は、アイリのことが好きだ。手に入らないお姫様より、こうして触れられるアイリが良い」
 カルヴァドスの言葉にアイリーンの心臓が跳ねた。
 時計が十一時の鐘を刻んだ。

(・・・・・・・・ああ、もうすぐ、魔法の時間が終わってしまう・・・・・・・・)

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