お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
「いっそ、エイゼンシュタインからジェームズお従兄様に来ていただいて、ウィリアムお兄様の代わりをしていただくのはどうかしら?」
 アイリーンの言葉に、アルフレッドが残念そうに頭を横に振った。
「ウィリアム殿下の姿絵はあちこちに飾られていますから、髪の毛の色が同じと言うだけでは、どうにもなりますまい」
「・・・・・・言ってみただけよ」
 逆はできても、その逆ができないことは言わずと知れたことだった。

 何しろ、デロス王家の面々はパレマキリア王家のメンバーとは面識があるのだから、遠く離れたタリアレーナの人々を騙すのとは訳が違う。
 それに、デロスの民特有の肌の白さを再現できる白粉はない。しかし、エイゼンシュタインの従兄ジェームズにウィリアムが成り代わるには、普通に白粉を塗ればいいだけだった。

「とりあえず、北の国境線の警備を増員して、湾内への海路のルート確保は、空いている漁船を動員しましょう」
 アイリーンは、頭を抱えそうになるのを必死に堪えていった。
「かしこまりました。直ちに手配いたします」
 アルフレッドは言うと、アイリーンの部屋を後にした。


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