お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
四 タリアレーナに向けて
アイリーンとアルフレッドの婚約が解消されたと言う噂は王宮を駆け巡り、アルフレッドはいたたまれないと言う言い訳をして翌日、休みを取った。
身代わりをするとなると、半年は宿下がりが出来ないこともあり、合わせるようにアイリーンはローズマリーに休日を与えた。
ローズマリーは実家に帰ると、すぐに買い物がしたいと街に出かけた。
待ち合わせた訳ではないが、お互いに相手の気持ちはよく分かるもので、ローズマリーが港の近くの公園へ向かうと、やはりアルフレッドはそこで群がる鳩に餌を与えていた。
ローズマリーが歩み寄っても、人に慣れた鳩は逃げ出さず、ローズマリーに道をあけてくれた。
「アルフ・・・・・・」
ローズマリーが声をかけると、アルフレッドが顔を上げた。
「マリー。隣に座るか?」
アルフレッドに問われ、ローズマリーは隣に腰を下ろした。
先日までは、アイリーン付きの侍女とアイリーンの婚約者と言う肩書きに縛られ、逢瀬は夜中、誰も見ていない場所でこっそりと、互いに相手を愛称で呼ぶこともままならなかった。
しかし、正式に婚約が解消された今、誰彼憚ることなく、人目のある場所でも逢い引きできるし、こうして隣り合って座り、愛称で呼び合うことも出来た。
「ちゃんと、俺から話すつもりだったんだ。それなのに、まさか、知られていたなんてな・・・・・・。カッコ悪いよな。如何にも、甲斐性なしって感じで・・・・・・」
「アルフ、そんな風に言わないで。私のあなたを見つめる姿に、気付かれてしまったのかも知れないのだから」
ローズマリーは言うと俯いた。
「私のしたことは、死罪に値することです。主の婚約者に恋するなんて・・・・・・」
「マリー、そんな風にアイリは思ってないよ。アイリとマリーは乳姉妹だろう? 俺とウィリアム殿下は幼なじみの親友。俺にしてみれば、アイリは妹みたいで、恋愛感情を持てる相手じゃなかったんだ。ただ、気が合って、傍目には仲良く見えたことは間違いない。でも、アイリには、全くその気がなかった」
「そうなのですか?」
「ああ。これでも、婚約が決まった当初は、口説いてみたんだよ。そのまま結婚になる可能性もあったし。アイリにその気がないなら、身を退くべきだと考えてから。でも、サッパリだった。アイリにしても、俺は兄の一人みたいにしか見えてなかったって分かっただけだったよ」
「それは、姫様がまだ恋をしたことがなく、相手も居なかったと言うことでは?」
ローズマリーの言葉に、アルフレッドが声を出して笑った。
「そこだよ。ふつう、身近にちょうどいい男がいたら惚れるものだろ?」
アルフレッドの言葉に、ローズマリーが頬を染めて頷いた。
「それなのに、アイリは俺に興味の欠片もなかったんだよ。だから、恋も何も、アイリには、俺は眼中にないってことなんだよ。まあ、俺もアイリと居てもトキメかなかったから、アイリ一人が悪いわけではないんだ。その点、マリーは可愛くて、直ぐにトキメいたから、非常識だとは思いながら、婚約者の有る身で告白してしまった。アイリに仕える身として、苦しい立場に追い込んでしまったことは申し訳なく思っている」
アルフレッドは心から謝罪した。
「それは、私も同じです。ずっと、姫様に申し訳なく思いながら、アルフレッド様をお慕いする気持ちを抑えずに居られませんでした。今でも、姫様には申し訳なくて・・・・・・」
アルフレッドが優しくローズマリーを抱き寄せた。
「マリー、アイリは俺達のことを祝福してくれている。だから、マリーが気にする事はない。マリーの側には俺が居るから」
「アルフレッド様・・・・・・」
「マリー、いい加減、その様付けで呼ぶのを止めてくれないか? 俺は、ただの近衛隊隊長だから」
「アルフ・・・・・・」
「それでいいよ、マリー」
アルフレッドは言うと、ローズマリーの事をしっかりと抱きしめた。
「俺は、これから船乗り達が集まる酒場を見て回る。姫に万が一の事があるといけないからな」
「私は、姫様が必要になると思われる洋服など細々をご用意するつもりです」
「マリー、アイリの事を頼む。男の俺には出来ないことが多いから」
アルフレッドが頼むと、ローズマリーは無言で頷いた。
「俺は、そろそろ行く。マリーも、遅くなる前に戻れよ」
アルフレッドは言うと、立ち上がった。
餌を貰えなくなった鳩は公園内に散り散りに歩き去っていなくなっていた。
ローズマリーはアルフレッドを見送ると、自らも買い物するために公園を去った。
貴族の娘がメイド連れで買い物にでるのは、デロスでは伯爵家以上が普通なので、男爵家の娘であるローズマリーは一人で買い物にでることも多く、デロスの街を一人で歩く事にも慣れていたし、買い物も一人ですることが出来た。
ローズマリーは町娘が着そうな、高くも安くもない服を買い揃え、身の回りの物も買い揃えた。
☆☆☆
身代わりをするとなると、半年は宿下がりが出来ないこともあり、合わせるようにアイリーンはローズマリーに休日を与えた。
ローズマリーは実家に帰ると、すぐに買い物がしたいと街に出かけた。
待ち合わせた訳ではないが、お互いに相手の気持ちはよく分かるもので、ローズマリーが港の近くの公園へ向かうと、やはりアルフレッドはそこで群がる鳩に餌を与えていた。
ローズマリーが歩み寄っても、人に慣れた鳩は逃げ出さず、ローズマリーに道をあけてくれた。
「アルフ・・・・・・」
ローズマリーが声をかけると、アルフレッドが顔を上げた。
「マリー。隣に座るか?」
アルフレッドに問われ、ローズマリーは隣に腰を下ろした。
先日までは、アイリーン付きの侍女とアイリーンの婚約者と言う肩書きに縛られ、逢瀬は夜中、誰も見ていない場所でこっそりと、互いに相手を愛称で呼ぶこともままならなかった。
しかし、正式に婚約が解消された今、誰彼憚ることなく、人目のある場所でも逢い引きできるし、こうして隣り合って座り、愛称で呼び合うことも出来た。
「ちゃんと、俺から話すつもりだったんだ。それなのに、まさか、知られていたなんてな・・・・・・。カッコ悪いよな。如何にも、甲斐性なしって感じで・・・・・・」
「アルフ、そんな風に言わないで。私のあなたを見つめる姿に、気付かれてしまったのかも知れないのだから」
ローズマリーは言うと俯いた。
「私のしたことは、死罪に値することです。主の婚約者に恋するなんて・・・・・・」
「マリー、そんな風にアイリは思ってないよ。アイリとマリーは乳姉妹だろう? 俺とウィリアム殿下は幼なじみの親友。俺にしてみれば、アイリは妹みたいで、恋愛感情を持てる相手じゃなかったんだ。ただ、気が合って、傍目には仲良く見えたことは間違いない。でも、アイリには、全くその気がなかった」
「そうなのですか?」
「ああ。これでも、婚約が決まった当初は、口説いてみたんだよ。そのまま結婚になる可能性もあったし。アイリにその気がないなら、身を退くべきだと考えてから。でも、サッパリだった。アイリにしても、俺は兄の一人みたいにしか見えてなかったって分かっただけだったよ」
「それは、姫様がまだ恋をしたことがなく、相手も居なかったと言うことでは?」
ローズマリーの言葉に、アルフレッドが声を出して笑った。
「そこだよ。ふつう、身近にちょうどいい男がいたら惚れるものだろ?」
アルフレッドの言葉に、ローズマリーが頬を染めて頷いた。
「それなのに、アイリは俺に興味の欠片もなかったんだよ。だから、恋も何も、アイリには、俺は眼中にないってことなんだよ。まあ、俺もアイリと居てもトキメかなかったから、アイリ一人が悪いわけではないんだ。その点、マリーは可愛くて、直ぐにトキメいたから、非常識だとは思いながら、婚約者の有る身で告白してしまった。アイリに仕える身として、苦しい立場に追い込んでしまったことは申し訳なく思っている」
アルフレッドは心から謝罪した。
「それは、私も同じです。ずっと、姫様に申し訳なく思いながら、アルフレッド様をお慕いする気持ちを抑えずに居られませんでした。今でも、姫様には申し訳なくて・・・・・・」
アルフレッドが優しくローズマリーを抱き寄せた。
「マリー、アイリは俺達のことを祝福してくれている。だから、マリーが気にする事はない。マリーの側には俺が居るから」
「アルフレッド様・・・・・・」
「マリー、いい加減、その様付けで呼ぶのを止めてくれないか? 俺は、ただの近衛隊隊長だから」
「アルフ・・・・・・」
「それでいいよ、マリー」
アルフレッドは言うと、ローズマリーの事をしっかりと抱きしめた。
「俺は、これから船乗り達が集まる酒場を見て回る。姫に万が一の事があるといけないからな」
「私は、姫様が必要になると思われる洋服など細々をご用意するつもりです」
「マリー、アイリの事を頼む。男の俺には出来ないことが多いから」
アルフレッドが頼むと、ローズマリーは無言で頷いた。
「俺は、そろそろ行く。マリーも、遅くなる前に戻れよ」
アルフレッドは言うと、立ち上がった。
餌を貰えなくなった鳩は公園内に散り散りに歩き去っていなくなっていた。
ローズマリーはアルフレッドを見送ると、自らも買い物するために公園を去った。
貴族の娘がメイド連れで買い物にでるのは、デロスでは伯爵家以上が普通なので、男爵家の娘であるローズマリーは一人で買い物にでることも多く、デロスの街を一人で歩く事にも慣れていたし、買い物も一人ですることが出来た。
ローズマリーは町娘が着そうな、高くも安くもない服を買い揃え、身の回りの物も買い揃えた。
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