お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
寝室に籠もったアイリーンは、謁見用の豪華なドレスを脱ぎ、普段着に着替えた。
豪華なドレスはパニエで裾を大きく広げるため、座るのも一苦労だが普段着に着替えれば、二匹と遊ぶのも楽になる。
「アイジー、ラフディー、私は明日から留守にするけれど、いつもの通り、お兄様のフリは毎日お願いね。それから、私の代わりにローズの言うことをちゃんと聞いてね。お兄様を見つけたら、すぐに戻ってくるから」
アイリーンが言うと、二匹は難しい顔をしてアイリーンの事を見つめた。
アイゼンハイムは言葉が分からないフリをしようとしたが、アイリーンに顔を掴まれ、ちゃんと聞くようにと命じられた。
ラフカディオは、その命令は聞きたくないと言う顔をしたが、アイリーンの真剣な表情に諦めてアイリーンの言葉に耳を傾けた。
「あなた達が私以外の命令を聞きたくないことは分かっているわ。でも、お兄様のピンチなの。だから、お願いよ。ローズを私だと思って従ってちょうだい。お願いよ」
アイリーンの言葉に、二匹はうなだれるように承諾の意を示した。
寂しそうに寄り添う二匹をアイリーンは、優しく撫でてやった。二匹は甘えるようにアイリーンに寄り添った。
泣き止んだローズマリーがノックをするまで、ずっとアイリーンは二匹を撫で続けた。
ノックの後、瞳を赤くしたローズマリーが扉を開けたので、アイリーンは二匹を連れて居間の方へと戻った。
居間のコーヒーテーブルの上に地図を広げてアルフレッドが待っていた。
「アイリ、船乗りが集まりそうな酒場を調べてきた。レッド・ライオンとグリーンズゲート、この二つなら質のいい船乗りが集まってる。何隻かはタリアレーナに向かうと言っていた」
アルフレッドは言うと、地図に印を付けた。
「ありがとう、フレド。婚約が解消になり、王宮にいずらくなるかも知れないけれど、後のことを宜しくお願いします」
アイリーンが言うと、ローズマリーが大きな荷物を持って部屋に戻ってきた。「姫様。洋服など、用意して参りました。貴族の娘に見える程度には致しました。さすがに、本当の町娘では、ムリが有りすぎますから」
ローズマリーは言うと、かなり着古されてはいるが、それなりに上質でアイリーンに似合う物を取り出して見せた。
「親の決めた結婚が嫌で、タリアレーナに留学した恋人を追いかけたいけれど、旅客船乗り場には家の者が見張っているので商船に乗せて欲しいという説明が嘘が少なくて、姫もやりやすいのではと考えました」
ローズマリーのアイデアに、アイリーンは頷いた。
「服は、洗い替えとコーディネートを考え、ドレスではなくツーピースにいたしました。もし、必要であれば、途中で新しい物をお求め下さい」
「ありがとう、二人とも。でも、お金のことを失念していたわ」
アイリーンは言うと、ため息を付いた。
基本、王女であるアイリーンがお金を持ち歩くことはない。街へ降り、お忍びで買い物をするときもお金を持つのはローズマリーかアルフレッドで、アイリーンが自分でお金を払うことはないからだ。
(・・・・・・・・ああ、なんてバカなんだろう。お金のことを忘れていたなんて・・・・・・・・)
アイリーンは考えながらため息を付いた。
「そんなことだろうと思ってたよ」
アルフレッドは言うと、懐から革袋を取り出してテーブルの上に置いた。
金属がぶつかる音がして、中にお金が入っていることにアイリーンは気付いた。
「フレド?」
「これは、俺の稼いだお金だから、誰にも文句は言われない。ただ、正直、足りるかどうかが心配だ」
「こんなに沢山あるのに?」
アイリーンは硬貨の詰まった袋を持ち上げて呟いた。
「それが、全部金貨か銀貨なら良いんだが、金貨はなくて、殆どが銀貨で、一部は銅貨なんだ」
アルフレッドは恥ずかしそうに言った。
「そんなこと無いわ。私なんて、銅貨一枚も持っていないんですもの。沢山よ」
アイリーンは笑顔で言った。
「申し訳有りません。私の賃金は直接家に払われるので、私は自由に持ち出すことが出来なくて・・・・・・」
ローズマリーは恥ずかしそうに言った。
基本、貴族社会で女性がお金を持つことは優雅ではないとされているので、王宮で奉公している貴族の娘たちの賃金は直接家に支払われ、娘達は自分で稼いだお金を手にすることはない。
しかし、アルフレッドのように男性の場合は、直接、賃金は本人に支払われる。だから、アルフレッドには、お金を用意することが出来ても、ローズマリーに用意することが出来ないのは当然だった。
ローズマリーが買い物をするためには、家長である父に必要な金額を申し出、小切手を書いてもらい銀行で現金にするか、必要な枚数の小切手を書いて貰い、その場その場で支払いに使うか、買い物をしたい店に行ってオーダーをし、商品を家に届けてもらい、請求が家に送られる仕組みのどれかになる。だから、男爵家令嬢とはいえ、ローズマリーがお金を持つのは、非常に稀な事だった。
実際、ローズマリーが現金を持つのは、アイリーンのお忍びにつき合うときに、城で用立てて貰ったお金を持つ時だけだった。
「大丈夫よ。商船に唯で乗せて貰う訳には行かないから、働かせて貰うから、少しは賃金を払って貰えるかも知れないわ」
アイリーンの言葉に、アルフレッドは楽観的過ぎると思いながら頭を掻いた。
「アイリ、もし船に乗せて貰っても、賃金は要らないと言うべきだ」
アルフレッドの言葉が理解できず、アイリーンは首を傾げた。
「船は女性だから、女性が乗るのを嫌がると縁起を担ぐ船乗りは多い。しかし、中には積極的に女性を船に乗せたがる連中が居る。自分達の享楽のために、何しろ、一旦、沖に出たら逃げ場はないからな」
アルフレッドの言葉に、ローズマリーが顔を赤らめて俯いたが、アイリーンは首を傾げたままだった。
「どういうこと?」
「賃金を払うのだから、酌をしろだの、夜の相手をしろだのと、言いがかりをつけてくる可能性があるってことだ。だが、賃金は船代にして欲しいと言えば、下手な要求をされることはない。まあ、まともな海の男なら、そんな事はしないが・・・・・・」
言いながら、なぜかアルフレッドは酒場の近くで出会ったオレンジ色の髪の船乗りの事を思い出した。
アルフレッドの説明に、アイリーンは納得したわけではなかったが、縋りつくような瞳で見つめるローズマリーに負け、アルフレッドの言うとおりにすることにした。
「分かったわ。フレドの言うとおりにするわ」
「それから、お金は一ヶ所ではなく、複数に小分けにして持つように。荷物の中、スカートの中とか、色々な隠せるところに細々分けてしまうこと。いいね」
アルフレッドの言葉にアイリーンは頷いた。
「本当に、フレドは物知りなのね」
アイリーンは感心したように言った。
「俺としては、そんな事も知らないアイリを独りで旅に出すことの方が不安でたまらないんだが」
アルフレッドは言うと、溜め息をついた。
「ねえ、フレド。気付いていて?」
アイリーンの問いに、アルフレッドがクビを傾げた。
「婚約する前は、ずっと『俺』と言っていたのに、婚約してからは、私の前では借りてきた猫のように『僕』とか『私』と自分のことを呼んでいたのに、婚約を解消したとたんに『俺』に戻ったのね」
アイリーンが言うと、アルフレッドが咳払いした。
「いや、その。姫の婚約者には、その、威厳が必要だから、俺というのはまずいと思って控えていたんだ」
アルフレッドは居心地悪そうに言った。
「そう。私の知らないところでフレドには、色々と苦労をかけていたのね。本当にごめんなさい」
「なぜアイリが謝る? 婚約を承諾したのも俺だし。そのおかげで、マリーとも深く知り合えた。俺には、良いことづくめだった婚約だが、貧乏くじを引いたのは、アイリじゃないか・・・・・・」
アルフレッドは言うと、アイリーンの事を見つめた。
「そんなことないわ。私はデロスの姫よ。国のために嫁ぐのが、姫としての生まれながらの役目よ。だから、貧乏くじなんかひいてはいないわ」
アイリーンは優しく微笑んだ。
アルフレッドは、この時ほどアイリーンを愛せなかった自分が許せなかった事はなかった。
もし、自分がアイリーンを深く愛していたら、きっとアイリーンも自分に心を開き、自分を愛してくれれに違いない。そうしたら、もっと早く二人の関係は進み、ウィリアムの帰国を待たずに婚姻に辿り着いていたかもしれず、そうなっていれば、いくらパレマキリアが、いや、ダリウス王子がアイリーンを妻にと求めても、結婚しているアイリーンを妻にすることは出来ないし、アイリーンも離婚してまでパレマキリアに嫁ぐとは言わなかっただろう。
しかし、アルフレッドはアイリーンではなく、ローズマリーを選んだ。
「アイリ・・・・・・。あなたを愛せなかった私を許して欲しい・・・・・・」
アルフレッドが頭を下げた。
「止めて、フレド。あなたを選ばすに、ダリウス殿下を選んだのは私よ・・・・・・。フレド、あなたは何も悪くないわ」
アイリーンは言うとローズマリーの手を取り、アルフレッドの手を取った。
「これからの六ヶ月、ウィリアムお兄様もいらっしゃらない王宮から私までいなくなったら、大変なことも多いと思うの。でも、二人で力を合わせて乗り越えてちょうだい。私がウィリアムお兄様を連れて帰ってくるまで・・・・・・」
アイリーンは二人の手をギュッと握った。
「二人は、大切な私の生涯の友達よ」
「それを言うなら共犯者だな」
「それでは、犯罪者みたいですわ」
それぞれの言葉に、三人は互いに顔を見合わせて笑みを漏らした。
豪華なドレスはパニエで裾を大きく広げるため、座るのも一苦労だが普段着に着替えれば、二匹と遊ぶのも楽になる。
「アイジー、ラフディー、私は明日から留守にするけれど、いつもの通り、お兄様のフリは毎日お願いね。それから、私の代わりにローズの言うことをちゃんと聞いてね。お兄様を見つけたら、すぐに戻ってくるから」
アイリーンが言うと、二匹は難しい顔をしてアイリーンの事を見つめた。
アイゼンハイムは言葉が分からないフリをしようとしたが、アイリーンに顔を掴まれ、ちゃんと聞くようにと命じられた。
ラフカディオは、その命令は聞きたくないと言う顔をしたが、アイリーンの真剣な表情に諦めてアイリーンの言葉に耳を傾けた。
「あなた達が私以外の命令を聞きたくないことは分かっているわ。でも、お兄様のピンチなの。だから、お願いよ。ローズを私だと思って従ってちょうだい。お願いよ」
アイリーンの言葉に、二匹はうなだれるように承諾の意を示した。
寂しそうに寄り添う二匹をアイリーンは、優しく撫でてやった。二匹は甘えるようにアイリーンに寄り添った。
泣き止んだローズマリーがノックをするまで、ずっとアイリーンは二匹を撫で続けた。
ノックの後、瞳を赤くしたローズマリーが扉を開けたので、アイリーンは二匹を連れて居間の方へと戻った。
居間のコーヒーテーブルの上に地図を広げてアルフレッドが待っていた。
「アイリ、船乗りが集まりそうな酒場を調べてきた。レッド・ライオンとグリーンズゲート、この二つなら質のいい船乗りが集まってる。何隻かはタリアレーナに向かうと言っていた」
アルフレッドは言うと、地図に印を付けた。
「ありがとう、フレド。婚約が解消になり、王宮にいずらくなるかも知れないけれど、後のことを宜しくお願いします」
アイリーンが言うと、ローズマリーが大きな荷物を持って部屋に戻ってきた。「姫様。洋服など、用意して参りました。貴族の娘に見える程度には致しました。さすがに、本当の町娘では、ムリが有りすぎますから」
ローズマリーは言うと、かなり着古されてはいるが、それなりに上質でアイリーンに似合う物を取り出して見せた。
「親の決めた結婚が嫌で、タリアレーナに留学した恋人を追いかけたいけれど、旅客船乗り場には家の者が見張っているので商船に乗せて欲しいという説明が嘘が少なくて、姫もやりやすいのではと考えました」
ローズマリーのアイデアに、アイリーンは頷いた。
「服は、洗い替えとコーディネートを考え、ドレスではなくツーピースにいたしました。もし、必要であれば、途中で新しい物をお求め下さい」
「ありがとう、二人とも。でも、お金のことを失念していたわ」
アイリーンは言うと、ため息を付いた。
基本、王女であるアイリーンがお金を持ち歩くことはない。街へ降り、お忍びで買い物をするときもお金を持つのはローズマリーかアルフレッドで、アイリーンが自分でお金を払うことはないからだ。
(・・・・・・・・ああ、なんてバカなんだろう。お金のことを忘れていたなんて・・・・・・・・)
アイリーンは考えながらため息を付いた。
「そんなことだろうと思ってたよ」
アルフレッドは言うと、懐から革袋を取り出してテーブルの上に置いた。
金属がぶつかる音がして、中にお金が入っていることにアイリーンは気付いた。
「フレド?」
「これは、俺の稼いだお金だから、誰にも文句は言われない。ただ、正直、足りるかどうかが心配だ」
「こんなに沢山あるのに?」
アイリーンは硬貨の詰まった袋を持ち上げて呟いた。
「それが、全部金貨か銀貨なら良いんだが、金貨はなくて、殆どが銀貨で、一部は銅貨なんだ」
アルフレッドは恥ずかしそうに言った。
「そんなこと無いわ。私なんて、銅貨一枚も持っていないんですもの。沢山よ」
アイリーンは笑顔で言った。
「申し訳有りません。私の賃金は直接家に払われるので、私は自由に持ち出すことが出来なくて・・・・・・」
ローズマリーは恥ずかしそうに言った。
基本、貴族社会で女性がお金を持つことは優雅ではないとされているので、王宮で奉公している貴族の娘たちの賃金は直接家に支払われ、娘達は自分で稼いだお金を手にすることはない。
しかし、アルフレッドのように男性の場合は、直接、賃金は本人に支払われる。だから、アルフレッドには、お金を用意することが出来ても、ローズマリーに用意することが出来ないのは当然だった。
ローズマリーが買い物をするためには、家長である父に必要な金額を申し出、小切手を書いてもらい銀行で現金にするか、必要な枚数の小切手を書いて貰い、その場その場で支払いに使うか、買い物をしたい店に行ってオーダーをし、商品を家に届けてもらい、請求が家に送られる仕組みのどれかになる。だから、男爵家令嬢とはいえ、ローズマリーがお金を持つのは、非常に稀な事だった。
実際、ローズマリーが現金を持つのは、アイリーンのお忍びにつき合うときに、城で用立てて貰ったお金を持つ時だけだった。
「大丈夫よ。商船に唯で乗せて貰う訳には行かないから、働かせて貰うから、少しは賃金を払って貰えるかも知れないわ」
アイリーンの言葉に、アルフレッドは楽観的過ぎると思いながら頭を掻いた。
「アイリ、もし船に乗せて貰っても、賃金は要らないと言うべきだ」
アルフレッドの言葉が理解できず、アイリーンは首を傾げた。
「船は女性だから、女性が乗るのを嫌がると縁起を担ぐ船乗りは多い。しかし、中には積極的に女性を船に乗せたがる連中が居る。自分達の享楽のために、何しろ、一旦、沖に出たら逃げ場はないからな」
アルフレッドの言葉に、ローズマリーが顔を赤らめて俯いたが、アイリーンは首を傾げたままだった。
「どういうこと?」
「賃金を払うのだから、酌をしろだの、夜の相手をしろだのと、言いがかりをつけてくる可能性があるってことだ。だが、賃金は船代にして欲しいと言えば、下手な要求をされることはない。まあ、まともな海の男なら、そんな事はしないが・・・・・・」
言いながら、なぜかアルフレッドは酒場の近くで出会ったオレンジ色の髪の船乗りの事を思い出した。
アルフレッドの説明に、アイリーンは納得したわけではなかったが、縋りつくような瞳で見つめるローズマリーに負け、アルフレッドの言うとおりにすることにした。
「分かったわ。フレドの言うとおりにするわ」
「それから、お金は一ヶ所ではなく、複数に小分けにして持つように。荷物の中、スカートの中とか、色々な隠せるところに細々分けてしまうこと。いいね」
アルフレッドの言葉にアイリーンは頷いた。
「本当に、フレドは物知りなのね」
アイリーンは感心したように言った。
「俺としては、そんな事も知らないアイリを独りで旅に出すことの方が不安でたまらないんだが」
アルフレッドは言うと、溜め息をついた。
「ねえ、フレド。気付いていて?」
アイリーンの問いに、アルフレッドがクビを傾げた。
「婚約する前は、ずっと『俺』と言っていたのに、婚約してからは、私の前では借りてきた猫のように『僕』とか『私』と自分のことを呼んでいたのに、婚約を解消したとたんに『俺』に戻ったのね」
アイリーンが言うと、アルフレッドが咳払いした。
「いや、その。姫の婚約者には、その、威厳が必要だから、俺というのはまずいと思って控えていたんだ」
アルフレッドは居心地悪そうに言った。
「そう。私の知らないところでフレドには、色々と苦労をかけていたのね。本当にごめんなさい」
「なぜアイリが謝る? 婚約を承諾したのも俺だし。そのおかげで、マリーとも深く知り合えた。俺には、良いことづくめだった婚約だが、貧乏くじを引いたのは、アイリじゃないか・・・・・・」
アルフレッドは言うと、アイリーンの事を見つめた。
「そんなことないわ。私はデロスの姫よ。国のために嫁ぐのが、姫としての生まれながらの役目よ。だから、貧乏くじなんかひいてはいないわ」
アイリーンは優しく微笑んだ。
アルフレッドは、この時ほどアイリーンを愛せなかった自分が許せなかった事はなかった。
もし、自分がアイリーンを深く愛していたら、きっとアイリーンも自分に心を開き、自分を愛してくれれに違いない。そうしたら、もっと早く二人の関係は進み、ウィリアムの帰国を待たずに婚姻に辿り着いていたかもしれず、そうなっていれば、いくらパレマキリアが、いや、ダリウス王子がアイリーンを妻にと求めても、結婚しているアイリーンを妻にすることは出来ないし、アイリーンも離婚してまでパレマキリアに嫁ぐとは言わなかっただろう。
しかし、アルフレッドはアイリーンではなく、ローズマリーを選んだ。
「アイリ・・・・・・。あなたを愛せなかった私を許して欲しい・・・・・・」
アルフレッドが頭を下げた。
「止めて、フレド。あなたを選ばすに、ダリウス殿下を選んだのは私よ・・・・・・。フレド、あなたは何も悪くないわ」
アイリーンは言うとローズマリーの手を取り、アルフレッドの手を取った。
「これからの六ヶ月、ウィリアムお兄様もいらっしゃらない王宮から私までいなくなったら、大変なことも多いと思うの。でも、二人で力を合わせて乗り越えてちょうだい。私がウィリアムお兄様を連れて帰ってくるまで・・・・・・」
アイリーンは二人の手をギュッと握った。
「二人は、大切な私の生涯の友達よ」
「それを言うなら共犯者だな」
「それでは、犯罪者みたいですわ」
それぞれの言葉に、三人は互いに顔を見合わせて笑みを漏らした。