お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
カルヴァドスにとって、愛は押し付けるものではなく、相手の幸せが一番だからだ。早くに王妃を亡くした国王から、蝶よ花よと可愛がられた姫巫女が他国に嫁ぐのは、正直本人だけでなく、家族も寂しいことだろうから、こうして重臣に降嫁するのが幸せなのだろうと、カルヴァドスは一人納得していた。それだけに、今回、上陸するなり耳にした話はカルヴァドスを奈落へと突き落とすようなものだった。
活気のあったデロスの港は、どうどうと侵略の意思を表明するパレマキリアの海軍に威圧され、まるでお通夜のように静かだった。その中で、パレマキリアの船乗りや、軍人崩れの間者とおぼしき連中が我が物顔で振る舞い、ウロウロしているせいで港湾の警備に当たっているデロス港湾担当者も殺伐として殺気立っていた。そして、何よりも腹立たしいのが、姫巫女の婚約解消とパレマキアに嫁ぐらしいという噂だった。
結局、陸に上がったものの、カルヴァドスは一晩しか滞在せず昨日のうちに船に戻って来ていた。何しろ、陸に上がれば、町は噂のせいでおめでたさの欠片もなく、不愉快な空気が立ちこめていたからだった。
デロスには海の女神の神殿があることから、船乗りにとっては聖地でもあるので、寄りたがらない船長はいない。そのせいで、広くもない繋留場所はいつも取り合いになるのが常だが、幸いにもカルヴァドスは沖に停泊しての上陸に当たったことはなかった。
活気のあったデロスの港は、どうどうと侵略の意思を表明するパレマキリアの海軍に威圧され、まるでお通夜のように静かだった。その中で、パレマキリアの船乗りや、軍人崩れの間者とおぼしき連中が我が物顔で振る舞い、ウロウロしているせいで港湾の警備に当たっているデロス港湾担当者も殺伐として殺気立っていた。そして、何よりも腹立たしいのが、姫巫女の婚約解消とパレマキアに嫁ぐらしいという噂だった。
結局、陸に上がったものの、カルヴァドスは一晩しか滞在せず昨日のうちに船に戻って来ていた。何しろ、陸に上がれば、町は噂のせいでおめでたさの欠片もなく、不愉快な空気が立ちこめていたからだった。
デロスには海の女神の神殿があることから、船乗りにとっては聖地でもあるので、寄りたがらない船長はいない。そのせいで、広くもない繋留場所はいつも取り合いになるのが常だが、幸いにもカルヴァドスは沖に停泊しての上陸に当たったことはなかった。