お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!
「やっぱり、陸に上がるぞ。船の上は退屈だ!」
 カルヴァドスは言うと、ビールを飲み干した。
「アニキ、マジで下りるんですか? あんなに不機嫌になって帰って来たのに?」
「こんなゲームやってられるか! お前ら、これ以上やったら、半年分の給料半分失くす事になるの分かってるよな?」
 オスカーがカルヴァドスの投げ捨てた手札をめくって声を上げた。
「あ、アニキ! マジっすか? これ、フルハウスじゃないっすか! 勝ちですよ。俺ら、あってもスリーカードですし」
「だから言ってんだろ。これ以上やったら、お前ら、一生、俺に借金払い続けることになるぞ。ったく、お前たちから小銭を巻き上げたところで、楽しくも何ともないんだよ」
 椅子を蹴るように立ち上がると、カルヴァドスは部屋を出ると甲板へ続く階段を駆け上がっていった。

 凪いだ海に繋留された『大海の北斗七星号』の甲板は揺れを感じさせず、カルヴァドスは町を見下ろした。
「相変わらず、ウザイ連中がゴロゴロしてやがんなぁ・・・・・・。まるで、自分の港みたいに振舞いやがって・・・・・・」
 カルヴァドスは呟くと、怒りを鎮めるように深呼吸をしてから陸へと続く階段を下り始めた。
「一等航海士! お待ち下さい」
「アニキ!」
 後ろから煩い連中が着いてくるが、カルヴァドスは気にもせず陸に上がると行きつけの酒場のある裏道へと向かった。
「アニキ! 最初の一杯は、俺がご馳走しますよ!」
 後ろから金魚の糞のように着いてくる数人のお供を完全に無視してカルヴァドスは歩き続けた。
 デロスの地を我が物顔で歩くパレマキリアの軍人を見ると、無性に腹立たしくなって喧嘩を売りそうになるので、カルヴァドスは脇目もふらずに、真っ直ぐに目的地を目指した。

☆☆☆

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