運命に出会いました!〜年下令嬢は魔術師様を熱愛中〜
しくしくどころかおいおいと再び泣き始めたわたしにお兄様は呆れたような目をして横に置いてあった桶にタオルを浸し、冷やしたものを渡して部屋を出ていってしまう。ひどいぃぃ、こんなに妹が弱っているのに出ていくなんて薄情者ぉ……
ぐずぐずと鼻を啜って泣いているうちにどうやら寝入ってしまったらしい。ふ、と眠りが浅くなったのかふわりと鼻に届く優しい薔薇の香りに悲しくなってしまう。
夢の中でも感じてしまう大好きな人の残滓に自分の女々しさを自覚する。でも好きなんだもの。夢でぐらい、良い思いをしたっていいじゃない。
重い瞼にやけに現実的なものを感じつつ、ゆっくりと目を開ける。窓を開けているのか、風に揺れる艶やかな黒い髪に、柔らかな光を灯す宝石のような瞳。口元は優しく弧を描いていて、この人が周りから悪魔と呼ばれて恐れられているなんて信じられない。むしろ慈愛の天使、いや神。
あぁ、本当になんて美しい人なんだろう……
普段もそう思っているけれど、弱った心にはさらに尊いものとして映るのだから恋心とはすごい。やだ、ますます好きになっちゃう。でも嫌われた……あ、涙出る。