運命に出会いました!〜年下令嬢は魔術師様を熱愛中〜



じわり、と涙が目尻から溢れる前に、苦笑してちょっとだけ困ったように男の人らしい手がわたしの方に伸びてきて優しく雫を掬い取る。その笑顔がいつもと違うような…いつもはもっと、なんというか線を引いたようなちょっとよそよそしい感じがあるのに、今はそれがない。夢だからかぁ。


いいなぁ。わたしだって現実でグラナティス様にこんな風に見つめられたい。言葉にしなくてもこの人が大切だって、愛おしいんだってわかるような優しい瞳。



「グレイス?まだ寝惚けているのかな…」



額に触れて、頬に触れて。優しい手のひらがわたしよりも高い温度を伝えてくる。なんてリアルな夢なんだろう…もうわたし夢の中で暮らしていたい。



「すき……すきなの、」


「…うん、知っているよ」



ほわり、と無防備に幸せそうに緩む表情が好き。困ったように眉を下げるのも、ちょっと目を彷徨わせるのもかわいくて好き。照れた時には頬と耳が赤くなるのも素直だなぁって嬉しくなる。


いっぱい傷つけられてきた筈なのに、その分を周りにぶつけずに人に優しくできるところが好き。自分の容姿で人に怖がられた時に途方に暮れたように目を伏せるのも、実はほんの少し好きだったりする。性格悪いかしら?


でもね、そういう姿を見るといつだってその傷に触れたいと思うの。わたしが、癒やしてあげたいと思うの。傷ついた分、幸せにしてあげたいなって思うの。


勿論、わたしみたいな小娘がでしゃばるなと言う人たちも一定数いる。本当にそう思っているのか、ただ単に難癖をつけたくてそう言っているのかはわからないけれど、それも真理だと思う。だってわたしがグラナティス様よりもずっと年下なのは変わらないし、変えられない。


でもそういうのって年齢じゃないでしょう?確かにわたしはかの人に比べて生きている年数は短いけれど、グラナティス様がどんな思いを抱えながら生きてきたのか想像はできるし、だからこそどう接すればいいのか考えて、わたしの全てをかけて丸ごと全部を愛していく覚悟がある。



あぁ、こんなにわたしの中には貴方の好きがあふれている。




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