運命に出会いました!〜年下令嬢は魔術師様を熱愛中〜
いつもと変わらないどころかいつもよりも優しい態度に勇気をもらって聞いてはみたけど、どんどんと声が掠れてしまったのはもう仕方ないと思う。
ドキドキと嫌な音を立てる心臓が耳の奥でうるさくて、悪い想像が頭をよぎってしまって、あれだけわんわん泣いたのにじわりとまた視界が歪んだ。
「していないよ。それは、確かにびっくりはしたけど………………それに、私のため、でしょう?」
自分の顔面が人様に見られる状態ではないことなんて頭から吹っ飛んでバッと音を立てるぐらい勢いよく顔を向ける。ちょっと困ったような眉尻を下げた笑み。その瞳には悪い感情は見えなくて。
「実はあの後、彼らの記憶を見させてもらったんだ」
「ひぃっ!!!!!」
それはつまりわたしが彼らをボコボコにした瞬間をグラナティス様に直接見られたことと同義では?!?!!?
違います違うんですいつもはこんな暴力的じゃないんです絶対の絶対に貴方に対してはそんなことしないから命をかけて約束します!!とショックを受けて言い訳めいたことを必死で訴えるわたしに頭をぽんぽんしてくれるグラナティス様尊い………………
「グレイスも、どこかで気づいていたと思うけど、私はいつも貴女に対して一枚壁を作っていた」
「………………はい」
確かにどこかよそよそしさは感じていた。けれどそれもかの人の境遇を思えば仕方のないことだと思うし特に気にしたことはなかった。いつかは、とは思っていたけれど。