運命に出会いました!〜年下令嬢は魔術師様を熱愛中〜



「初めて出会った時に、あんな風に私に好意を示してくれて……とても嬉しかったんだ」



けれど自分の容姿が他人からどう見られているのか幼い時から嫌でも自覚させられた。家族はそんなことは気にせずに愛情深く接してくれたけれど、それがとても珍しく、恵まれていることは分かっている。まして他人に好かれるなんて有り得ないと、そう思っていた。


それなのに会った瞬間から真っ直ぐに私を見つめたかと思えば可憐な笑顔を見せてくれて、小さな少女だった貴女から求婚されて、白昼夢に違いないと思えば時間を空けずに魔術師塔にまで手製のランチを持ってきてくれて。


どうせいつかは目が覚めて、私のことを嫌厭して離れていくに違いないと思っていたのに、一途に私に好きだと、言葉でも態度でも示してくれて。


初めて家族以外の人から向けられた純粋で熱烈な愛情は、魂が震えるほどに鮮烈で、心臓が高鳴ってこのまま死んでもいいと思えるほどに心地よかった。


貴女は、本当に私のことを好きなのか、愛してくれているのかと安堵したと同時に恐怖した。このまま彼女の愛を受け入れてもいいのか。そのせいで彼女が不幸になるのではないか、と。


黒髪に赤目の悪魔は、ことごとくを不幸にした。男も女も、老人も赤子も関わらず。誘惑し堕落させ、絶望を撒き散らして、絶叫と悲哀を響き渡らせた。


……結局のところは自分に自信がなくて臆病だっただけだ。彼女のためだと言い訳をして本心を見ないふりをして諦めようとした。自分から遠ざける気もないくせに、このままぬるま湯のような幸福を感受しようとした。




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