運命に出会いました!〜年下令嬢は魔術師様を熱愛中〜
止めても無駄です止めたら薙ぎ倒しますと据わった目で宣言すればお兄様から澄んだ目で「俺はまだ死にたくない」と言われた。実の妹になんて失礼な。しても半殺しぐらいですわ。
パパッと身だしなみを整えてからいざ行かん。普通に考えたらマナー的に知らない相手に話しかけたり爵位が上の者に爵位が下の者から話しかけるなんてもってのほかだ。
しかしここを逃してしまえばかの人とお知り合いになるまでどれだけの月日がかかると思っているのか。……無理!そこまで待てない!のんびりしている間にあの美しい人が他の人に取られたらどうするんだ!
カツカツとヒールの音を鳴らして真っ直ぐにかの美しい人に向かって行く。そんなわたしをかなり怪訝な顔をして見送る周囲など目に入らないし気にもしない。
ふわりと鼻に届くのは芳しい薔薇のような香り。濃密なのに嫌にならない、ずっと嗅いでいたくなるような優しい香りだ。
そんなに距離は離れていなかったのですぐにかの人もわたしの存在に気づいて、困ったような不思議な表情を浮かべてから不自然じゃない程度に目を伏せる。あからさまにそちらに向かっているのだから動くのも躊躇われたのかしら。逃げることもできるだろうに、優しい人なんだわ。
あぁ、それにしても勿体ない。あんなに美しい瞳なのに。