(旧)この青く澄んだ世界は希望の酸素で満ちている



 * * *


「よう、空澄(あすみ)彩珠(あじゅ)
 今日はいつもより来るの晩いな」


 時刻は二十時を回っている。

『心が呼吸できる世界』に来る。
 それが、いつもよりも三十分以上晩くなった。


「なんだぁ、
 もしかして彩珠と空澄、
 お前らデートでもしてたのかぁ?」


「……っ‼」


 デッ……デート、って……‼


 凪紗が突然そんなことを言ったから。
 妙に胸の鼓動が高鳴り出した。


「あぁ、そうだけど」


「……っ⁉」


 そっ……そうだけど、って⁉


 凪紗の言葉に空澄が顔色一つ変えないでそんな返答をしたから。
 頭の中がパニック状態になりそうになる。


「おぉ、
 デートしてたこと、認めたな」


 凪紗がニヤリとしながらそう言った。


「別に隠す必要もないからな」


「……っ⁉」


 あっ……空澄っ⁉

『心が呼吸できる世界』(ここ)に来る前に一緒に出かけたこと。
 あれって、デートだったの⁉


 そう思っても。
 なぜだろう。
『あれはデートだったの?』
 そう訊くことができない。



 その間にも。
 心詞(みこと)は「デートだなんて彩珠ちゃんと空澄くんラブラブだね」と笑顔で言っているし。
 響基は「空澄くんと彩珠さん、いつの間に付き合ってたの?」と言って驚いた表情(かお)をしている。

 みんなの言葉を聞いていると、話がとんでもない方向に進んでいるような……⁉


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