(旧)この青く澄んだ世界は希望の酸素で満ちている



「それで、どこに行ってたんだよ」


 少しの隙間もなく話は進んでいき。
 またまた凪紗がそんなことを訊いてくる。


 私と空澄(あすみ)は恋人同士ではない。
 それを言うタイミングを逃してしまった、かもしれない。


「夕焼け見に行ってた」


 心の中であたふたしながらバタバタと走り回っている。
 その状態とは真逆で空澄は冷静にそう返答する。


「場所は、
 あそこは穴場だな」


 続けて空澄はそう言う。


「穴場って、どこだよ」


 凪紗は興味津々でそう訊く。


「場所の名前なんて知らねぇよ。
 小学六年の頃に見つけて以来、
 そこは俺にとってお気に入りの場所なんだよ」


「へぇ、
 そんなにも気に入ってる場所を彩珠(あじゅ)とねぇ」


 空澄からそう聞いた凪紗の表情(かお)は、
 ますますニヤニヤしている。


「だけどさ、
 そんな穴場だったら私らも連れて行ってくれよ」


 一瞬、凪紗のニヤニヤは休憩に入り。
 今は普通の表情(かお)


「なんでだよ」


 空澄も凪紗と同じく普通の表情(かお)


「いいだろ、
 私ら仲間なんだからさ」


 すると凪紗はニッと笑った。


「確かに仲間だ。
 だけど彩珠はその中でも特別なんだよ」


 凪紗の言葉に空澄はサラッとそう言った。


 だけど私は。
 空澄の言葉を聞いて。
 心臓が思いきり飛び跳ねた。


 特別、って……。

 あっ……空澄っ。
 それは、一体どういう……。


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