（旧）この青く澄んだ世界は希望の酸素で満ちている

「何をバカなことを言っているんだ‼
　家を出てどうするというのだ⁉」


　親父がものすごい剣幕で私のあとを追ってくる。


「一人暮らしする」


　それでも。
　そんな親父に臆することなくその言葉を言った。


　本当はずっと言いたかった、この言葉。
　本当はお母さんも一緒にと言いたかった。
　だけど、やっぱりお母さんのことを巻き込みたくないから。



　それから。
　今の気持ちは、それまでの気持ちとは少しだけ違っていて。
　お母さんだけではなく空澄(あすみ)とも一緒に暮らしたい。
　だけど、それだと空澄にも迷惑がかかってしまうと思う。

　ただ、空澄は優しいから『迷惑なんかじゃない』と言ってくれるかもしれないけれど。


「お前が一人暮らしなんかできるわけないだろ‼
　自分のこともろくにできないお前が‼」


　お母さんのこと。
　空澄のこと。
　二人のことを考えていたら。

　またもや親父が怒鳴り声を上げながら情けないことを言っている。

　そのとき親父が私に追いつき私の腕を力強く掴んできた。


「勝手に決めつけないで」


　それでも。
　そんな親父に怯まずに言い返した。


「とにかく一人暮らしをするなんて許さん‼
　いいから家に帰るぞ‼
　向こうに車を停めてある」


　そう言って親父は私の腕を強く掴んだまま車が停めてある方へ無理やり引っ張ろうとしている。


「私は帰らないっ‼」


　そう強く言って親父が引っ張っている方向と逆の方向へ歩きかけるけれど。


「そんな勝手なことが通るわけがないだろ‼」


　親父が私を引っ張る力の方が勝って身動きが取れない。


　それでも、なんとかしようと必死にもがく。