(旧)この青く澄んだ世界は希望の酸素で満ちている
「彩珠さん、
御実家に帰りましょう」
だけど。
親父以外に他の人の声が聞こえ、その人たちが私の腕を掴んだ感触がした。
見ると。
親父はいつの間にか私から離れていて。
代わりに親父の部下の武藤さんと北山さんが私の腕を掴んで車が停めてある方へ連れて行こうとしている。
親父より強引ではないけれど、男性二人が連れて行く力は女子の私では抵抗することができない。
「武藤さんっ、北山さんっ、
お願いっ、離してっ」
必死にそう言っても。
「いけません。
彩珠さん、どうか先生のおっしゃる通りになさってください」
武藤さんと北山さんは私を離してくれそうにない。
……無理もない、かもしれない。
武藤さんと北山さんは親父の部下。
だから仕事として親父の言う通りにしているだけ。
だから仕方がない。
……だけど。
やっぱり嫌。
このまま大人しく連れて行かれるなんて。
「……空澄……」
助けてっ。
空澄っ。