（旧）この青く澄んだ世界は希望の酸素で満ちている

「……っ⁉」


　と思っていたら。
　二人の男の人が空澄(あすみ)の両腕を掴んで空澄の動きを止めた。

　その二人の男の人も親父の部下の人たち。


　空澄の動きが止まったのを見た親父は、ゆっくりと空澄に近づいていく。


「誰だ、君は」


　そして空澄の目の前に立ち、空澄にそう訊いた。


「僕は那覇空澄といいます」


　空澄は親父の顔を知っている。

　親父はテレビ出演もしているから見たことがあると言っていた。


「彩珠(あじゅ)さんと小学校からの同級生です。
　……それから、お付き合いさせていただいております」


　お付き合い……。

　空澄の口から直接聞くと。
　より実感する。


　って。
　今のこの状況で、こんなことを感じているなんて……。


「彩珠と付き合っている⁉
　何を言っているんだ君は‼」


　空澄の言葉を聞いて親父は強い口調で空澄にそう言った。


「俺、本気です」


　私も空澄も、親父の部下の人たちに動きを止められて自由が利かないのに。
　それでも。
　やっぱり嬉しく思ってしまう。
　空澄に『本気』と言ってもらえた。
　そのことが、ものすごく嬉しい。


「君が本気かどうか、
　そんなことはどうでもいい。
　初めから、そんなことは許していないのだから」


　やっぱり、そうだろうと思った。


　空澄の言葉に親父はそう言い返した。

　しかも、ものすごく冷ややかな表情(かお)で。


「許していただけないのなら許していただけるまで諦めません」


　そんな親父の言葉にめげずに空澄はそう言ってくれた。

　やっぱり、そのことが嬉しくてたまらない。


「ただ、今は目の前で起こっていること。
　それを解決する。
　そのことを優先させていただきます。
　お願いです、彩珠さんのことを離していただけませんか」


　空澄も親父の部下の人たちに取り押さえられている。

　それでも私のことを優先して救おうとしてくれている。

　そのことに、ものすごくありがたく感謝している。