君と見た夢のような世界、それは切ないくらいに澄んで美しく

変化




 時刻は二十二時五十分。

 今、自分の部屋にいる。


 それなのに。
 全く落ち着かない。

 今までなら。
 自分の部屋にいれば親父と顔を合わせない。
 だから、それなりに落ち着くことができていた。

 だけど今は。
 私の部屋のドアの前に親父の部下の武藤さんと北山さんがいる。

 部屋から出るたびに『どちらに行かれるのですか』と訊かれてしまう。

 今の私には自由など全くない。
 自分の部屋にいても自分の部屋にいる気がしない。

 どこかの個室に閉じ込められている。
 そんな気持ちになってしまう。



 今朝、親父に無理やり連れて行かれ家に帰らされた後。
 いつものように説教というか侮辱が始まった。

 今日はいつも以上に激しく侮辱され。
 心の二酸化炭素の濃度が今までで一番高くなってしまった。


 その後はずっとこの時間まで自分の部屋にこもっている。

 自分の部屋(ここ)から出たのは。
 洗面所、浴室、お手洗いを利用するときのみ。

 食事はお母さんに自分の部屋(ここ)まで持ってきてくれた。

 そのときに見たお母さんの表情(かお)は私のことをとても心配してくれていた。

 そんなお母さんに『ありがとう』という気持ち。
 そして『心配させて申し訳ない』という気持ちが混ざっている。



 そんな気持ち。
 それから……。


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