君と見た夢のような世界、それは切ないくらいに澄んで美しく
すぐにわかった。
誰の声か。
というか。
ここは実家。
このようなタイミングで声をかけてくる人物。
それは、たった一人しかいない。
わかっている、とっくに。
だけど、怖い。
それでも。
振り向かないわけにはいかない。
「……っ」
そう思って怯えているとき。
空澄が私の手をそっと握ってくれた。
そして空澄は『大丈夫』という気持ちを込めたやさしい眼差しで私のことを見つめてくれた。
そんな空澄に『ありがとう』という気持ちを込めて力強く頷いた。
空澄たちから勇気をもらった私は勇気を出して後ろを振り向いた。
「彩珠、お前というやつは」
案の定。
そこには親父の姿が。
その周りには三人の部下の人たちがいる。
親父はじっとこちらを見ている。
絶対に怒り狂ったような表情をしていると思った。
だけど、それは少し違っているようで。
親父の表情は怒りを通り越して軽蔑しているように見える。
怒り狂った表情。
軽蔑しているような表情。
一体どちらがマシなのだろう。