君と見た夢のような世界、それは切ないくらいに澄んで美しく



 私たち五人が無言のままでいると、親父は怪訝そうに私たち五人の方を見た。



 そのあと親父の視線は私に集中し、再び私を何ともいえないような目つきで見る。


彩珠(あじゅ)
 お前はいつからそんな不良になったんだ」


 相変わらず親父の見下したような心をずたずたにする視線。

 何年も見ているけれど、決して慣れることはない。


「自分の娘になんてこと言うんだよっ‼」


 親父の言葉に凪紗が怒りをあらわにした。


「娘を連れて行かないのなら
 このことを水に流そう。
 だが、そのまま娘を連れて行くというのなら
 君たち四人を不法侵入と誘拐で警察に通報する」


 親父は凪紗の言葉を無視してそんなことを言い出した。


「きたねぇぞっ‼
 そんな脅しに乗ってたまるか‼」


 親父の言葉に凪紗の怒りは最上級に達しているように見えた。

 とはいっても、凪紗の最上級の怒りがどのくらいなのかは、わからないけれど。


「そっ……そうですよっ。
 そんなの卑怯だと思いますっ」


 凪紗の次に親父に発言したのは。
 いつもおどおどしている響基。

 いつもはあまり自分の意見は言わない響基。
 だけど、こうして親父に発言している。
 そんな響基の必死の勇気が伝わってくる。


「私たちは彩珠ちゃんのことを迎えに来ただけなんです」


 心詞(みこと)も必死に親父にそう言っている。


「迎えに? こんな時間にコソコソと?
 迎えに来るのであれば常識内の時間に玄関からでいいのではないか。
 君たちがしていることは傍から見れば、ただの不法侵入者にしか見えない」


 心詞の言葉に親父はそう言い返す。


「確かにそうだったかもしれません。
 そのことに関しては反省しています。
 だけど、どうしても彩珠さんに会いたい彩珠さんを救いたい、
 その気持ちは確かなものだから」


『会いたい』
『救いたい』

 伝わる。
 空澄の思い。


「救いたい……だと?
 そんな言い方をされると、
 まるでこの家の環境が悪いみたいじゃないか」


 空澄の言葉に親父の表情(かお)は一気に不機嫌になる。


「そう……なんじゃないんですか。
 少なくとも彩珠さんにとっては、
 とても居心地が悪いものだと思います」


 言ってくれた。
 空澄が。
 私の代わりに。

 この家は居心地が悪い。
 そのことを。


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