君と見た夢のような世界、それは切ないくらいに澄んで美しく
「和んでいるところ悪いが、
はっきりと言っておく。
もう二度と彩珠に会わないでくれ」
和んでいたところに容赦なく親父の水を差す言葉が降ってきた。
「なぜ会ってはダメなのですか。
俺たちは彩珠と一緒にいたいだけなのに」
親父の言葉にめげずに空澄は必死にそう言ってくれた。
「空澄の言う通りだ。
私らは彩珠と一緒にいたいだけなんだ。
それなのに、なんで彩珠に会ってはいけないんだよ。
おっさん、あんま頑固だと嫌われるよ」
凪紗の言葉に親父は「なっ……なんという口の利き方をしているんだ」と言っているけれど、そのときの親父の様子は少し動揺しているような感じにも見えた。
そんな親父のことを見て少しだけクスッとしてしまった。
「お願いします。
これからも彩珠ちゃんと会わせてください。
ずっと彩珠ちゃんと友達でいたいんです」
心詞も必死にそう言ってくれている。
「お願いします。
彩珠さんと友達でいさせてください」
響基も必死にそう言ってくれている。
「まだわからないようだね。
私も本当はこんなことはしたくないのだが……警察に連絡だ」
空澄、凪紗、心詞、響基。
四人の思いは親父に届かず。
親父は部下の人に警察に連絡するように言った。
親父の指示で部下の人が警察に連絡しようとしている。
どうしよう。
このままでは空澄たちが警察に連行されてしまう。
「待って」
そう思ったから。
親父と警察に連絡しようとしている部下の人にそう言った。
なんとしてでも空澄たちが警察に連行されてしまうことを止めたい。
そう思った。
私の声に反応して部下の人がスマホの画面に触れようとしている指を止めた。
「お父さん、私は部屋に戻ります。
だから警察に連絡することはやめてください」
今の時点では。
その言葉を言うことが空澄たちが警察に連行されない唯一の方法だと思ったから。