(旧)この青く澄んだ世界は希望の酸素で満ちている



「何を言っているんだ。
 そんな仕事(こと)をして何になる。
 もっと世の中の役に立つ仕事(こと)をしなさい」


「なんでそんな言い方をするの。
 お父さんは弱い立場の人たちを守ることは
 世の中の役には立たないと思っているの」


「そういうことを言っているわけではない」


「そう言ってるじゃない。
 お父さんの言い方はいつも冷酷で人を見下した言い方をしてる」


 いつもいつも。
 親父はそうなんだ。


「そういうつもりではない。
 そういう仕事(こと)は他の人たちに任せておけばいい。
 お前はもっと上を目指しなさい」


「『上』って何っ?
 仕事に上も下もないでしょ。
 お父さんはなんでいつもそんな言い方しかできないのっ」


 これが。
 これが人の模範にならなければいけない立場の者が言う言葉なのだろうか。

 なんで親父はいつもこういう言い方しかできないのだろう。

 こんな親父(人間)が国を代表する仕事(こと)をしているなんて。
 そんなの、あまりにも情けなくて悲しくなってくる。


「悲しいことに現実はそうなんだ。
 世の中には勝者と敗者、この二択しかない。
 お前には敗者の道を歩んでほしくないんだ。
 だから父さんは、いつもお前に厳しくしているんだ」


 勝者と敗者……。

 情けない。
 本当にこの親父は。

 どうしてそんなふうにしか考えることができないのだろう。

 そして、なんでこんなにも根が腐っているのだろう。

 こんなのが私の父親だなんて。
 本当に信じられない。


 それから。
 なにが厳しくだ。

 あんなのは、ただの侮辱。
 それを『厳しく』と正当化して偉そうにものを言う親父はなんだろう。
 意味不明としか思えない。


< 149 / 198 >

この作品をシェア

pagetop