(旧)この青く澄んだ世界は希望の酸素で満ちている



 * * *


 時刻は二十時を回ったところ。


 空澄(あすみ)、凪紗、心詞(みこと)、響基、そして私。

 今日は『心が呼吸できる世界』の中にある部屋で過ごすのではなく、それぞれの家に帰ることに。

 そうすることにしたのは相談し合ったわけではなく。
 偶然、五人の気持ちが同じだった。


 明日、学校に行くための準備もある。
 それから……心の準備もある。

『心が呼吸できる世界』の中にある部屋で過ごしたら心の準備をすることができないというわけではない。
 ただ、今夜は一人で気持ちを落ち着かせたい。
 私も空澄たちも、そういう気分、なのだと思う。



 学校に行くこと。
 私は十日ぶりくらい。
 だけど空澄たちはもっと久しぶりになる。

 十日ぶりくらいでも学校に行くことは、正直なところ緊張する。
 だから、それ以上の期間を行っていない空澄たちは、もっと緊張するのだろうと思った。



 私も含め、空澄、凪紗、心詞、響基。
 みんな、ちゃんと問題を解決できるといいな。


 そう思いながら空澄と一緒に帰り道を歩いている。

 凪紗、心詞、響基とは『心が呼吸できる世界』と現実の世界に繋がる真っ白な光の出入り口がある公園で解散した。

 私と空澄は帰る方向が同じ……ということもあるけれど……。
 空澄と私は……恋人同士……というのもあって。
 少しだけ散歩をしてから私の家まで送ってくれている。


 そのときは明日のことは全く話さず。
 たわいのない会話をしていた。


 そうしているうちに、あっという間に家に着いた。


「送ってくれてありがとう」


 そう言うと、空澄は「いいよ、そんなの」と言ってくれた。


「それじゃあ、行くね」


 そう言って家の中に入ろうとした、ら。


彩珠(あじゅ)


 空澄に名前を呼ばれて。
 振り向くと……。


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