(旧)この青く澄んだ世界は希望の酸素で満ちている



「卒業……ということは、
 もう惺月(しずく)さんと会うことはできないんですか……?」


 もう惺月さんと会うことができなくなるのでは。
 そう思っていると。
 心詞(みこと)が惺月さんにそう訊いた。


 心詞の質問に惺月さんはどう返答するのだろう。


「私と会わなくなるということは
 心詞ちゃんたちの心の状態が改善の方へ向かっているということ。
 だから、それはとても良いことで喜ばしいことだと思うわ」


『心が呼吸できる世界』に居る惺月さんと会うことができない。


 それは『心が呼吸できる世界』と現実の世界の行き来ができなくなってしまうということ。

 つまりそれは『心が呼吸できる世界』と、そこに繋がる真っ白な光の出入り口が見えなくなってしまうということになる。



 確かに。
 それらが見えなくなる。
 そうなるということは、私たち五人の心の状態が改善の方へ向かっている証。
 だから良いことだと思わなければならないのかもしれない。


 だけど……。

 心の状態が改善の方へ向かう。
 そうなると惺月さんと会えなくなってしまう。

 それは、とても寂しい。


 私たち五人は惺月さんと『心が呼吸できる世界』のおかげで今の自分たちがいると思っている。

 だから、そんな惺月さんと会えなくなってしまうのは、やっぱりものすごく寂しい気持ちでいっぱいになる。


「そんな悲しいこと言わないでください。
 私たちは惺月さんのおかげで今の私たちがあると思っています。
 だから、そんな惺月さんと二度と会うことができなくなってしまうなんて
 そんなこと、とても寂しいし辛いです」


 心詞も私と同じ気持ちでいる。


 心詞の言葉に私も大きく頷く。

 そうしながら空澄(あすみ)と凪紗と響基の方を見ると。
 三人も心詞の言葉に大きく頷いている。

< 180 / 198 >

この作品をシェア

pagetop