(旧)この青く澄んだ世界は希望の酸素で満ちている
「みんなの気持ち、すごく嬉しいわ。
本当にありがとう」
惺月さんは、いつものようにやさしくて穏やかな笑顔。
だけど、もうその笑顔を見ることはできない。
「私も正直なところ、みんなに会えなくなることは寂しいわ。
本当は『心が呼吸できる世界』にいる者として
卒業していく子たちに『会えなくなることが寂しい』なんて
好ましくない発言なのだけどね」
そう言った惺月さんの表情は笑顔の中に寂しさが含まれているように見えた。
「そうは思っても、
みんなの心の状態が改善の方へ向かっていって
『心が呼吸できる世界』を卒業していく嬉しさの方が大きく勝るわ」
惺月さんはそう言うと、今までで一番の笑顔を見せてくれた。
「だから、あなたたちにも笑顔で『心が呼吸できる世界』を卒業していってほしいの」
惺月さんの言葉に私と心詞は涙を滲ませ。
凪紗は思いきり涙を流して泣いている。
凪紗は強そうに見えるけれど。
実は涙もろく、か弱い部分がある。
空澄と響基は涙は滲ませていないけれど寂しそうな表情をしている。
「みんな、本当にありがとう。
みんなの気持ちは、これからもずっと大切に心の中にしまっておくわ」
私たち五人の様子を見て惺月さんは笑顔でそう言ってくれた。
「たとえ会えなくても、
みんなとは心で繋がっているわ。
みんなのこと、ずっと忘れない」
惺月さんはそう言って、私たち五人に一人ずつ順番に両手でやさしく握手をしてくれた。
惺月さんの温かい手。
そして惺月さんのこと。
私もずっと忘れない。
惺月さんと握手をするとき、私たち五人も「惺月さんとは心で繋がっています。ずっと忘れません」と言った。
私たち五人の言葉に惺月さんは笑顔で「ありがとう」と言った。