(旧)この青く澄んだ世界は希望の酸素で満ちている
「そろそろ『心が呼吸できる世界』を出るときがきました。
だけど、その前にもう少しだけ話をさせてくださいね」
私たち五人に握手をすることを終えた惺月さんは穏やかな声でそう言った。
『心が呼吸できる世界』を出なければいけない。
そのときが、だんだんと近づいてきている。
惺月さんの話。
『心が呼吸できる世界』を卒業したら、もう聞くことはできない。
本当にこれで最後なんだ。
「あなたたちは感情や気持ちをコントロールすることができるようになり、
さまざまな逆境や困難を解決する方へ導くことができる能力を身につけることができました」
惺月さんの言葉。
「それは、あなたたちが一回りも二回りも大きく、そして強くなり成長することができたという証なのです」
一言一言を。
「ただ、
今、抱えている苦難や困難を解決することができたとしても、
これから先また新たな苦難や困難に苦しめられることがあるかもしれません」
しっかりと心の中に。
「だけど、あなたたちなら、
きっとそれらを解決し乗り越えることができると思います」
ずっと。
ずっとずっと。
「だけど、辛くて苦しくて限界になりそうなとき、
他の道を歩んで行ってもいいのだということは忘れないでください」
大切に——。
惺月さんの最後の言葉。
それは私、空澄、凪紗、心詞、響基の心の中にジンと響き渡った。
そして私たち五人は惺月さんの言葉に「はい」と返事をした。