(旧)この青く澄んだ世界は希望の酸素で満ちている



「あっ……‼」


 一歩前に足を踏み入れ現実の世界に入った瞬間。
 私たち五人の左腕に身に付けているブレスレットがスッと消えていった。


 そして、それを見ていた私たち五人は繋いでいる手を離し、同時に後ろを振り向いた。

 そこにはもう『心が呼吸できる世界』と現実の世界を繋ぐ真っ白に光る出入り口は見えなかった。


「見えない……な」


 そのとき最初に口を開いたのは凪紗だった。


「あぁ……」


 次に口を開いたのは、空澄(あすみ)


 そのあと私と心詞(みこと)と響基は凪紗の言葉に小さく頷いた。



「そういえば、
 私ら全員のブレスレットが緑色になってたっていうことは、
 お前らが抱えている問題も解決の方へ向かってるってことだよな」


 凪紗は私たちにそう言った。


「まぁ、そうだな、
 良い方へは向かっているだろうな」


 凪紗の言葉に空澄はそう返答した。


 私と心詞と響基も小さく頷く。


「なんかさ、すげぇ余韻が残っているし、
 今日の学校のことも含めて、いろいろ話したいこともあるけど、
 明日も学校があるし、
 詳しいことは近いうちにということでどうだ」


 空澄の言葉に私、凪紗、心詞、響基は大きく頷いた。


「あと、それからさ、
 俺たちこうして仲良くなることができたから——」


 これから空澄が言おうとしていること。
 それがなにか。
 もう、わかっている。

 なぜなら。
 私も空澄と同じことを思っているから。

 それは——。


「連絡先交換しよ」


 そう思っているのは私や空澄だけではない。
 凪紗、心詞、響基も同じ思い。

 その言葉を言ったのは、全員ほぼ同時だった。



 こうして私たち五人は連絡先を交換し。
「連絡する」と言い合い、それぞれの家に帰っていった。


< 187 / 198 >

この作品をシェア

pagetop