(旧)この青く澄んだ世界は希望の酸素で満ちている



 彼女が凪紗に謝ったとき、凪紗は思った。

 彼女のこと。
『許す』か『許さない』か。
 その二択でいうならば『許さない』だろう。

 だけど、その二択で簡単に決められるものでもないと思った。

 ただ、たとえ嫉妬心からくるものでも他人(ひと)を犯人に仕立て上げるというのは決してしてはいけないこと。


 凪紗は悩んだ。
 彼女にどう返答すればいいのか。

 悩んで悩み……。
『もういいよ。
 最終的にはこうして正直に謝りにきたわけだし。
 ……ただ、これだけは言わせてくれ。
 世の中には思い通りにならないことはたくさんある。
 世の中のほとんどの人たちが、そういう思いをしているだろう。
 それでも、その人たちは必死に生活している。
 そのことだけは忘れるな』
 凪紗は彼女にそう伝えた。


 そのとき。
 凪紗の左腕に身に付けているブレスレットが緑色になった。



 そして、その後。
 クラスの雰囲気はすっかり元に戻っている。

 そして演劇の主役は凪紗に返り咲いた。

 凪紗が学校を休んでいる間、彼女が主役に抜擢された。

 だけど凪紗が学校に戻ってきたときに彼女の方から主役を降りることを申し出た。

 凪紗は主役は彼女でいいと言ったのだけど、彼女の主役を降りる意思は変わらなかった。

 そして凪紗は文化祭に向けて演劇の準備をクラスメート全員で進めている。



 これが凪紗の近況報告。


< 190 / 198 >

この作品をシェア

pagetop