君と見た夢のような世界、それは切ないくらいに澄んで美しく



 好きなものやこと。

 そういえば、あったような気がする。
 私にも。
 何年か前のことだけど。



 小学一年生のとき。
 ピアノを習っていたことがあった。

 お姉ちゃんとお兄ちゃんが習っていて。
 私も習ってみたいと思った。


 だけど。
 辞めた。
 小学五年生のときに。

 理由は。
 お姉ちゃんやお兄ちゃんに比べて上達することができなかったから。


 それなら、お姉ちゃんやお兄ちゃんがしていないことをする。
 そうすれば二人と比べなくてもすむ。
 そう思い、絵画教室やバイオリン教室に通った。

 だけど、なんだかイマイチで。
 絵画教室もバイオリン教室も一年以内で辞めた。



 結局、何をやっても中途半端。
 これといって夢中になれるものやことは見つからず。
 それが今も継続中。


 そんな私だけど。

『無理につくろうとしなくてもいい。
 できたとき、それに打ち込めばいいんじゃないか』

 那覇が言ってくれた言葉。
 そのおかげで気持ちが軽くなった。

 だから。
 那覇には感謝している。



 そう思いながら、とても美味しいハンバーグを食べていた。


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