(旧)この青く澄んだ世界は希望の酸素で満ちている
親父は仕事が忙しいから家で顔を合わせることはほとんどない。
だけど、たまにいつもよりも早く帰ってきてしまうことがある。
それは私にとって苦痛でしかない。
いつもよりも早く帰ってきたのだから身体を休める時間にすればいいのに。
親父は私に「なぜお前はこんなにもダメなんだ。
姉や兄を見習え。
同じ血を引いているのに、どうしてこんなにも違うんだ。
お前はこの家の恥だ」と言ってくる。
これでは言い足りないのだろう。
親父はさらにこんなことを言った。
「我が家は世間から理想で優秀な家族とも言われている。
子供たちは将来有望で優秀で完璧。
そして良い父親と良い母親に恵まれて、どこにも非が無い完璧な家族。
そして夫婦仲は良く、良き夫、良き妻だと」と。
その言葉を聞いて思った。
『どこが理想で優秀な家族だ。
何が良い父親、良き夫だ。
本性は人のことを侮辱することしか能がない、ただのクズ親父じゃないか』と。
そう思っていると。
親父はこう続けた。
「それなのに、お前のような出来損ないがいると
家族のイメージが崩れる恐れがある。
お前は我が家の疫病神だ」と。
……情けない。
なんという情けない発言。
本当に呆れた。
親父はクズだと思っている。
だけど、ここまでクズだとは。
親父の情けない発言を聞いて思った。
『イメージがそんなにも大事なのか。
それに、なにがイメージだ。
本当はこんなにもすさんでいるのに』と。
そんな親父には言いたいことが山ほどある。
だけど言わない。
理由は、あんなクズ親父に何を言っても無駄だから。
というのもあるけれど。
言い返すと何倍にもなって跳ね返り話が長引く、ということもあるから。
だから親父に何を言われても、いつも右から左に聞き流している。
我慢をして黙っていれば。
時間がきて話は終わっていく。