君と見た夢のような世界、それは切ないくらいに澄んで美しく



 * * *


 もう夕方かぁ……。


 こういうときの時間はあっという間に過ぎてしまう。

 学校にいるときはこんなにも早く感じないのに。


 家にいるときは、そのときの状況による。

 親父が家にいる。
 そのときは、ものすごく時間が長く感じる。



 そういえば。
 今日は親父、いつもよりも早く帰ってくるんだっけ。

 あぁぁ、嫌だ。

 家に帰ったらまた親父に侮辱の言葉を浴びせられてしまう。

 だけど。
 そろそろ家に帰らないと。
 それはそれで厄介なことになるだろうから。

 だから、家に……。


 …………。

 ……無理。

 やっぱり。
 帰りたくない。

 このまま。
 このまま、どこか。

 私のことを知らない。
 はるか遠くへ。
 行きたい。


< 6 / 198 >

この作品をシェア

pagetop