(旧)この青く澄んだ世界は希望の酸素で満ちている
夜明け前。
空は真っ暗ではなく、とても濃い紺色をしている。
この時間帯の空は変化が早い。
ほんの少しだけど二~三分後には肉眼でわかるくらいになっている。
そして十分後には、はっきりと明るくなったことがわかった。
「いいな、この空」
空の明るさを感じているとき。
空澄が空を見上げてそう言った。
「俺、どんな空も好きだけど、
これくらいの空の表情は特に好きだと感じる」
空澄は空の色のことを『表情』と言った。
「人もさ、いろいろな表情があるだろ。
それと同じで空にも表情があると思うんだ」
そう話している空澄は純粋に好きなものを追いかけている子供のような表情をしている。
「人でいうなら、同じ笑顔でも、そのときによって微妙に違うだろ。
空も同じ晴れでも濃い青や薄い青がある」
確かにそうだね。
「もちろん笑顔や晴れだけではない。
笑顔以外に泣いているときや怒っているときも
同じではなく微妙に違いがある。
晴れ以外に曇りや雨のときでも同じではなく微妙に違いがある」
そうだね。
泣いているとき。
シクシクと泣いている場合や号泣している場合など、いろいろな泣き方がある。
同じ曇りでも。
白っぽい雲のときもあれば、ものすごく濃いグレーの雲のときなど、いろいろな色があり。
それから青空が透けるくらいに薄い雲やモクモクとしている分厚い雲など、いろいろな厚さの雲がある。
「そういう空のちょっとした表情の違いや変化を見ていることが
すごく好きなんだ」
空澄が言っていること。
すごく伝わってきて。
聞いているうちに共感している私がいることに気が付いた。
これからは、ただ空の下を歩くだけでなく空の表情を見ながら歩いていきたいと思った。