(旧)この青く澄んだ世界は希望の酸素で満ちている



「あっ、
 俺、こっちだから」


 こういう話をしていると時間が経つのはあっという間だと思った。

 空澄(あすみ)は私が帰る道と違う道を示した。


「うん。
 また今夜ね」


 空澄にそう言うと。
 空澄も「あぁ、また今夜な」と言った。


 こうして私と空澄はお互いの帰り道を歩き出した。


「空澄」


 無意識だった。

 気付いたら。
 歩きかけた空澄の名前を呼んでいた。


 私の声に気付いた空澄は穏やかな表情(かお)で振り向いた。


 そんな表情(かお)をする空澄のことを見たとき。
 なぜか少しだけ胸の鼓動が高鳴った。


「あっ……あのさ、
 ありがとう」


 私がそう言ったから。
 空澄は「なにが?」と言って不思議そうな表情(かお)をしている。


「素敵な話を聞かせてくれて」


 そのおかげで空を見ることの喜びや楽しさを知ることができた。


「空澄のおかげで空を見ることに興味が出てきた」


「それは良かった。
 彩珠(あじゅ)にそう言ってもらえると嬉しいよ」


 そう言った空澄の笑顔は。
 本当に嬉しい気持ちが溢れていて。

 その笑顔を見ている私も嬉しい気持ちになった。


「呼び止めてごめん。
 それじゃあ、また今夜」


 そんな気持ちになりながら空澄にそう言った。


「謝らなくていいよ。
 俺は彩珠にそう言ってもらえて嬉しかった。
 それじゃあ、また今夜な」


 私の言葉。
 それが空澄にとっては嬉しかった。
 今の空澄の言葉でより実感した。

 それは……。
 なんだか照れくさかった。


 そう感じながら家へ向かい歩き出した。


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