君と見た夢のような世界、それは切ないくらいに澄んで美しく
「心配しなくても大丈夫。
彩珠のお母さんから公園に来る連絡が来たときは
俺は木の陰にでも隠れてるからさ」
「きっ……木の陰……?」
たぶん。
空澄が木の陰に隠れると言ったのは。
空澄の気遣い。
お母さんが着替えを持って来たときに空澄が一緒にいると、お母さんが驚いてしまうかもしれない。
そして、そのまま空澄の家に泊まるのかもしれないと思わせてしまうかもしれない。
女子が男子の家に泊まるということは親にとっては心配なことだと思っていると思っているから。
だから空澄は自分の存在をお母さんに気付かれないように隠れていると言ったのだと思う。
とはいっても。
今現在、空澄から『家に来いよ』と言われているのだけど。
「あぁ。
だからそれまでは俺は彩珠とベンチに座って
彩珠のお母さんのことを待ってる」
空澄はそう言うと。
今まで私が座っていたベンチに座り。
「彩珠も早く座りなよ」と言って。
空いているベンチのスペースを手で軽くポンポンとした。
そんな空澄に引き寄せられるように。
空澄がポンポンとしたスペースにそっと座る。
そのとき。
なぜか「失礼します」と言ってしまい。
それを聞いた空澄は。
「『失礼します』って、なんだよ。
今まで彩珠が座ってたところなのに」
とクスッと笑われてしまった。
「優しいね、空澄は」
だけど。
そんな空澄が。
とても温かく感じて。
気付いたら。
そう言っていた。
「そう?
彩珠にそう言ってもらえると、すげぇ嬉しい。
ただ、俺の優しさは誰にでもってわけじゃないけどな」
空澄はそう言って無邪気な笑顔を見せた。
その笑顔は朝日に負けないくらいキラキラと輝いていて。
私には眩し過ぎるくらいだった。