君と見た夢のような世界、それは切ないくらいに澄んで美しく



 空澄(あすみ)の家に行く途中。
 コンビニに寄り、歯ブラシセットと洗顔フォームとヘアピンとヘアゴム、それからパスタとサラダとお茶を買い。
 空澄は弁当とサラダとお茶を買った。

 そしてコンビニを出て。
 再び空澄の家へ向かって歩き始めた。



 緊張——。

 今は空澄だけが暮らしている空澄の家。
 そこに行くこと。
 全く何も思わないといえば噓になる。


 だけど。
 不思議なことに。
 緊張(それ)と同じくらい。
 楽しみにしている自分がいる。

 その理由。
 それは、よくわからない。



 私——。

 空澄が私に『俺の家に来いよ』と言った。
 そのことを大胆だと思った。

 だけど。
 空澄にそう言ってもらったからとはいえ。
 今は一人暮らしをしている空澄の家。
 そこに行くことにした。
 そんな私も、かなり大胆なことをしていると思った。


 今までの私は、こういう感じではない。

 では。
 なぜ今の私は、そういうことができるのか。

 ……そうか。
 もしかすると。
 今の私は、ものすごく睡眠不足。
 それによる疲労で眠るところを求めることに必死だった。
 だから、空澄の『俺の家に来いよ』
 その言葉が神からの救いの言葉に聞こえたのだろう。


 なるほどねぇ。
 そういうことか。

 空澄と一緒に空澄の家へ向かっているとき。
 頭の中で自分の心の中をそう解析していた。

 そうすることで。
 身体を休めるところを提供してくれる空澄に。
 改めて心から感謝をしようと思った。


 ……今度。
 お礼にファミレスでご馳走でもしようかな。

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