君と見た夢のような世界、それは切ないくらいに澄んで美しく



 * * *


 ご飯を食べ終え。
 今は部屋にいる。


 “コンコン”


 そのときドアをノックする音がし。
彩珠(あじゅ)』と呼ぶ空澄(あすみ)の声が聞こえた。


 ドアを開けると。
 少しだけ髪が濡れ、首にはスポーツタオルをかけた空澄が立っている。


「今、シャワー浴びてた」


 私と目が合って。
 すぐにそう言った、空澄。


「そうだったんだ」


 空澄が言ったことに、そう返事をする。


「それでさ、
 彩珠も遠慮しないで使ってな、浴室」


 すると。
 空澄が親切にそう言ってくれた。


 そのことは。
 ものすごくありがたい。


「えっ、
 でっ……でも……」


 だけど。
 浴室まで使わせてもらうことは。
 さすがに悪い。


 それに……。
 男子の家の浴室を借りる。
 それは抵抗がないといえば噓になる。


「遠慮なんかしなくていいって」


 複雑な気持ちになっていると。
 空澄がそう言ってくれた。


 空澄の気持ちは。
 本当に本当にありがたいと思っている。


「大丈夫だよ、
 覗かないから」


 まだ複雑な気持ちになっていると。
 空澄がサラッとそう言った。


 その言い方には全くいやらしさは感じない。

 だけど。
 やっぱり複雑な気持ちは残る。

 残るけれど……。


「……ありがとう。
 それじゃあ、お言葉に甘えて……」


 六月の中旬(この時期)、シャワーを浴びることができないのは少し辛い。

 だから浴室を使わせてもらうことにした。


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