君と見た夢のような世界、それは切ないくらいに澄んで美しく
「今日の早朝、彩珠と途中まで一緒に帰っただろ。
それから分かれ道になって、お互いそれぞれの道を歩いて行った。
だけど、そのとき俺はすぐに戻って
彩珠が歩き出した同じ道に行って
彩珠の少し後ろをこっそりと歩いて行ったんだ」
「えっ⁉
そうだったの⁉」
全然気付いていなかった。
空澄が私の少し後ろを歩いていたなんて。
「……でっ……でも、
なんで……」
私の後ろをこっそりと……?
「心配だったから」
「心配……?」
「あぁ。
だから彩珠の家が見えるギリギリのところまで彩珠の後を歩いて行った。
彩珠が家に帰ったとき、また親父さんに何か言われるんじゃないか、
そう思うと居ても立っても居られなくて。
彩珠が家に帰って、しばらくしても彩珠が家から出てこなかったら、
俺はそのまま自分の家に帰ろうと思った」
そうだったんだね。
「だけど彩珠が家から出てきた。
そんな彩珠のことをどうにかして助けたかった。
だから偶然を装って彩珠に声をかけた」
空澄の思いやり、気遣い。
それらが心の中に染み渡り。
全身に行き渡って行く。
「公園で空澄と会うことができたのは、
偶然じゃなくて空澄がそうしてくれたからだったんだね。
私、そんなこと全然気付かなくて。
本当にありがとう。
空澄がそうしてくれた、その気持ちがすごく嬉しい」
何回『ありがとう』を言っても全く足りない。
「いいよ、礼なんて」
あれっ?
空澄が私から顔を逸らした。
なんでだろうと思い。
空澄の顔を覗き込むと……。