目隠し、はずして
なんとか改札口まで戻ってきたところで、着信音が鳴り響いた。Yさんからだ。

「もしもし?」

息を整えながら電話口に出る。

「あ、千春ちゃん? 連絡つかないから電話したんだけど、今どこにいるかな?」

「すみません、今改札前に着いたところで……」

「あぁ、紺色のワンピースって言ってたよね、見つけた。迎えに行くね」

通話が切れ、ふと見上げると目の前に40代くらいの男性が立っていた。

「どうも、千春ちゃんだよね」

「え……」

思わず体が固まる。
28歳だと言っていたYさんは白髪混じりの頭で、ベルトにはでっぷりとしたお腹が乗っかっている。
どう見ても年齢詐称しているとしか思えない。

「いやー、人が多いね。無事に会えてよかった。ほら、行こう」

むんずと手を掴まれて、引っ張られる。

「あのっ」

手を引っ込めようとしても力では敵わない。

「ここは人が多いから、人の少ないところでゆっくり話そうね」

怖い。怖くて、声が出せない。
誰か……!!
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