目隠し、はずして
「千春ちゃん、行くよ?」

立ち止まったわたしに、大和くんが不思議そうな顔で声をかける。

「えっと、あの、どこに……?」

大和くんが入ろうとしている建物を凝視する。
“宿泊”、“休憩”、“フリータイム”などと書かれた看板が掲げられている。

「どこって、ここは嫌だった?」

「嫌っていうか……今日はランチデートって……」

異性とキスどころか手もまともに繋いだことのないわたしにはかなり刺激が強すぎる建物だ。

わたしが知らないだけでランチが食べられるのかもしれないが、初デートなのだから大人のホテルでのランチは遠慮しておきたい。
< 8 / 32 >

この作品をシェア

pagetop