エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
思わず開いた唇の隙間から碧の舌が入り込み、慣れた動きで珠希の口内をなめあげる。

「約束は守れよ」

碧は珠希の唇を一度甘噛みし、つぶやいた。

「珠希が泣くのは俺に抱かれているときだけだ。それ以外で泣くのは許さない」

きっぱりと言い放つや否や、碧は意志を持った足取りで歩き始めた。
思いの外大きく揺れて、珠希は碧の首にさらに強くしがみついた。
碧は寝室のドアを乱暴に開くと、ふたりで選んだ大きなベッドの上に珠希をそっと下ろした。
そして珠希が落ち着く間もなく彼女の身体を組み敷くと、震える唇に噛みつくようなキスを落とした。

「んっ」

激しいキスに珠希は身体をのけ反らせ、息苦しさから逃れようと抵抗する。
押しつけられた碧の唇が、熱くてたまらない。
けれどそのたび碧の手が伸び珠希の身体を押しつける。

「悪い……痛くても少しだけ我慢してくれ」

切迫している碧の声と顔が、たまらなく愛しくて。
珠希は碧に求められるがまま、初めて知る快楽に身を委ねた。



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