エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
「やっぱり珠希さんだ。久しぶりだね。五年ぶりくらいかな。ご家族の皆さんはお元気?」
「はい。おかげさまで、皆元気にしています」
突然目の前に現われたのは、脳神経外科の部長である笹原医師だった。
脳外科の権威として世界に知られていて、国内外の多くの脳外科医が彼のもとで学ぶことを目標にしていると聞く。
人懐こい笑顔で患者とフランクに接する姿からは想像できないが、いわゆる脳外科の神様のような存在だと、碧は言っていた。
祖父が亡くなって以来の再会に、珠希は声を弾ませる。
「相席してもいいかな?」
手にしているコーヒーを掲げ、笹原は問いかける。
「はい、もちろんです」
「あ、まずは結婚おめでとう。まさかうちのドクターと結婚するとはびっくりしたよ」
珠希の向かいに腰を下ろしながら、笹原は楽しげに笑う。
「ありがとうございます。急に決まって、私も信じられなくて」
顔を合わせた早々の祝いの言葉に、珠希は頬を染め視線を泳がせた。
「そのうち宗崎が会わせてくれるかなと期待してたんだけど、ここで会えてうれしいよ」
温かな声に、珠希は視線を上げる。
優しい面差しは変わっていないが、目尻には以前にはなかったシワが増えていて、珠希はあれから五年経ったのだと、実感する。
珠希も腰を下ろし、改めて「ご無沙汰しています」と軽く頭を下げた。
「あ、宗崎と待ち会わせでもしてるのかな? さっき外来を覗いたら、午前診最後の患者さんの診察が終わったところだったよ」
「いえ、違うんです。さっきまで患者さんのお母さんとお会いしていたんです。三好遥香ちゃんです」
「遥香ちゃん……? ああ、そういえば退院したらエレクトーンを習うって教えてくれたけど、そのことで? 珠希さんが音楽教室の講師をしているってうちに仕事で来ていた拓真くんから聞いてるけど」
珠希はうなずいた。
「はい。おかげさまで、皆元気にしています」
突然目の前に現われたのは、脳神経外科の部長である笹原医師だった。
脳外科の権威として世界に知られていて、国内外の多くの脳外科医が彼のもとで学ぶことを目標にしていると聞く。
人懐こい笑顔で患者とフランクに接する姿からは想像できないが、いわゆる脳外科の神様のような存在だと、碧は言っていた。
祖父が亡くなって以来の再会に、珠希は声を弾ませる。
「相席してもいいかな?」
手にしているコーヒーを掲げ、笹原は問いかける。
「はい、もちろんです」
「あ、まずは結婚おめでとう。まさかうちのドクターと結婚するとはびっくりしたよ」
珠希の向かいに腰を下ろしながら、笹原は楽しげに笑う。
「ありがとうございます。急に決まって、私も信じられなくて」
顔を合わせた早々の祝いの言葉に、珠希は頬を染め視線を泳がせた。
「そのうち宗崎が会わせてくれるかなと期待してたんだけど、ここで会えてうれしいよ」
温かな声に、珠希は視線を上げる。
優しい面差しは変わっていないが、目尻には以前にはなかったシワが増えていて、珠希はあれから五年経ったのだと、実感する。
珠希も腰を下ろし、改めて「ご無沙汰しています」と軽く頭を下げた。
「あ、宗崎と待ち会わせでもしてるのかな? さっき外来を覗いたら、午前診最後の患者さんの診察が終わったところだったよ」
「いえ、違うんです。さっきまで患者さんのお母さんとお会いしていたんです。三好遥香ちゃんです」
「遥香ちゃん……? ああ、そういえば退院したらエレクトーンを習うって教えてくれたけど、そのことで? 珠希さんが音楽教室の講師をしているってうちに仕事で来ていた拓真くんから聞いてるけど」
珠希はうなずいた。