エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
くるみの母は、ツリーの前ではしゃぐ娘を見ながら照れくさそうに肩をすくめる。
「いえいえ、本当に上達してますよ。毎日の練習の成果ですね。これからが楽しみです」
「ありがとうございます。実はくるみが練習熱心なのは、和合先生のお兄さんのおかげなんですよ」
「……兄、ですか?」
珠希が一瞬表情を曇らせたことに気づかず、くるみの母は言葉を続ける。
「もともとは私が和合拓真さんのファンで、コンサートの映像を家でよく見ているんです。必然的にくるみも一緒に見るようになって、あっという間にファンになったんですよ」
「ああ、そうだったんですね」
珠希は感情のこもらない声でさらりと返す。
それと同じような話なら、今まで他の生徒からも何度も聞かされたことがある。
「拓真さんがピアノから離れてご実家の会社を継ぐと聞いたときには私、とてもショックで涙が止まらなかったんです」
「……はい」
「最近くるみも一緒に見るようになって。拓真さんの素敵な演奏とあの王子様のようなルックスに子どもながらにときめいたみたいで。拓真さんのようなピアニストになるって言い出しちゃって。それがきっかけで毎日練習するようになったんです。拓真さんのおかげです」
「……いえそれは……くるみちゃんはもともと練習熱心でしたから」
珠希はそう言って、熱く拓真のことを語るくるみの母から顔を背けた。
これまでにも拓真のファンだという生徒やその家族と顔を合わせる機会は多く、珠希が拓真の妹だということで、この教室に入会を決めた生徒も少なからずいる。
拓真がピアノから離れて三年以上が経った今でも、拓真はピアニストを目指す子ども達の目標で、特別な存在なのだろう。
「くるみ、拓真さんがあのツリーの前で撮った写真を見て、今年は絶対に自分も撮るって楽しみにしていたんですよ」
「いえいえ、本当に上達してますよ。毎日の練習の成果ですね。これからが楽しみです」
「ありがとうございます。実はくるみが練習熱心なのは、和合先生のお兄さんのおかげなんですよ」
「……兄、ですか?」
珠希が一瞬表情を曇らせたことに気づかず、くるみの母は言葉を続ける。
「もともとは私が和合拓真さんのファンで、コンサートの映像を家でよく見ているんです。必然的にくるみも一緒に見るようになって、あっという間にファンになったんですよ」
「ああ、そうだったんですね」
珠希は感情のこもらない声でさらりと返す。
それと同じような話なら、今まで他の生徒からも何度も聞かされたことがある。
「拓真さんがピアノから離れてご実家の会社を継ぐと聞いたときには私、とてもショックで涙が止まらなかったんです」
「……はい」
「最近くるみも一緒に見るようになって。拓真さんの素敵な演奏とあの王子様のようなルックスに子どもながらにときめいたみたいで。拓真さんのようなピアニストになるって言い出しちゃって。それがきっかけで毎日練習するようになったんです。拓真さんのおかげです」
「……いえそれは……くるみちゃんはもともと練習熱心でしたから」
珠希はそう言って、熱く拓真のことを語るくるみの母から顔を背けた。
これまでにも拓真のファンだという生徒やその家族と顔を合わせる機会は多く、珠希が拓真の妹だということで、この教室に入会を決めた生徒も少なからずいる。
拓真がピアノから離れて三年以上が経った今でも、拓真はピアニストを目指す子ども達の目標で、特別な存在なのだろう。
「くるみ、拓真さんがあのツリーの前で撮った写真を見て、今年は絶対に自分も撮るって楽しみにしていたんですよ」