エリート外科医との政略結婚は、離婚予定につき~この愛に溺れるわけにはいきません~
「それは……和合製薬の今後の発展を考えたとき、宗崎病院との縁は願ってもない話なんだ」
「発展……」
あらかじめ用意していたかのようにすらすらと答える父を、珠希は力なく見つめる。
今後の発展とはどういうことなのか、ピンとこないのだ。
父はいつも冷静かつ穏やかで、大企業のトップとしての責任や苦労を家族にいっさい見せない。
拓真が父の後を継ぐと宣言し和合製薬に入社してからは以前にも増して会社関係の話を家ですることはなくなった。
社外秘扱いの情報を口にしてしまう可能性を考えのことだろうと、珠希は理解している。
そのせいで珠希は和合製薬の内情や経営状況をまったく知らず〝和合製薬の今後の発展〟と聞かされても、よくわからないのだ。
「もともと宗崎病院とうちは関係が深くて、父さんも昔MRだった頃は出入りしていたんだ。関係強化を進めて売り上げを伸ばしたい」
「う……うん」
わかるような、わからないような。
戸惑いを隠せない珠希に、父は畳みかけるように言葉を続ける。
「新薬開発にはかなりのお金が必要なのはわかるだろう? だから売り上げを伸ばして開発費用を捻出する必要がある。そのためには宗崎病院と関係を強化して経営基盤を盤石なものにする必要がある」
「う……うん。それはなんとなくわかるけど」
父の強い声音に気圧され、珠希は椅子の上で後ずさりする。
「でも、父さんは今まで特定の病院との関係強化や癒着は会社にとってマイナスだって言って、そういうことを嫌ってなかったっけ……?」
会社にとって売り上げを伸ばすことは至上命題だが、だからといってそのためになにをしてもいいわけではない。
これまで何度もそう言っていた父の口から出た今の言葉に、珠希はちぐはぐな印象を受けた。
これまで和合製薬に関して悪い噂を耳にしたことはなく、決算情報を見ても問題点があるとも思えない。
「発展……」
あらかじめ用意していたかのようにすらすらと答える父を、珠希は力なく見つめる。
今後の発展とはどういうことなのか、ピンとこないのだ。
父はいつも冷静かつ穏やかで、大企業のトップとしての責任や苦労を家族にいっさい見せない。
拓真が父の後を継ぐと宣言し和合製薬に入社してからは以前にも増して会社関係の話を家ですることはなくなった。
社外秘扱いの情報を口にしてしまう可能性を考えのことだろうと、珠希は理解している。
そのせいで珠希は和合製薬の内情や経営状況をまったく知らず〝和合製薬の今後の発展〟と聞かされても、よくわからないのだ。
「もともと宗崎病院とうちは関係が深くて、父さんも昔MRだった頃は出入りしていたんだ。関係強化を進めて売り上げを伸ばしたい」
「う……うん」
わかるような、わからないような。
戸惑いを隠せない珠希に、父は畳みかけるように言葉を続ける。
「新薬開発にはかなりのお金が必要なのはわかるだろう? だから売り上げを伸ばして開発費用を捻出する必要がある。そのためには宗崎病院と関係を強化して経営基盤を盤石なものにする必要がある」
「う……うん。それはなんとなくわかるけど」
父の強い声音に気圧され、珠希は椅子の上で後ずさりする。
「でも、父さんは今まで特定の病院との関係強化や癒着は会社にとってマイナスだって言って、そういうことを嫌ってなかったっけ……?」
会社にとって売り上げを伸ばすことは至上命題だが、だからといってそのためになにをしてもいいわけではない。
これまで何度もそう言っていた父の口から出た今の言葉に、珠希はちぐはぐな印象を受けた。
これまで和合製薬に関して悪い噂を耳にしたことはなく、決算情報を見ても問題点があるとも思えない。